【InterBEE 2012】4K時代到来 周辺機器の充実で多メディア映像ビジネスの可能性を広げる
2012.11.16 UP
計測技術研究所は、ハンディ型の4K信号発生器を参考出品した
ローデ・シュワルツはPCIeタイプ4K出力ビデオカードを出展
■ぐっと近づいてきた4K映像制作の世界
これまでデジタルシネマのためのフォーマットだった4Kが、映像制作の世界にぐっと近づいてきた。ソニー(#6211)がこのInterBEEにあわせて発表した「PMW-F55」および「PMW-F5」は、4K機としては低価格であり「4Kは機材が高くて」という言い訳を許さない決意が見てとれる。一方、今InterBEEで最大のブースを確保したキヤノン(8218)は、「Cinema EOS」シリーズを押し出した展示を行い、4K機「Cinema EOS C500」が人気を集めていた。InterBEEに復帰したJVCケンウッド(8104)は、3月に発表した4Kカメラレコーダー「GY-HMQ10」をブース正面に置き、来場者が画像を確認しやすい展示を行っていた。
このように、4Kカメラは充実してきた。もはや特別なカメラとしてではなく、選択の一つとして考えることができるようになってきた。しかし、故竹下彊一氏の言葉にあるように「放送は、カメラとVTRがあれば作れるわけではない。」伝送、補正、効果に加え、較正、調整などに種々の機材が必要になる。今回のInterBEEでは、それらの機材も姿を現し始めた。
■カメラの周辺機器も4K対応へ
アストロデザイン(#5410)のブースには、同社が技術を担当した4K衛星伝送の概要が示され、4Kの衛星中継が実用段階にあることを示していた。同じブースでは、4Kテロップシステムや4K圧縮レコーダも出展され、シネマ以外の用途を見据えた機材が登場し始めた。放送用4K規格が固まる前に、デジタルサイネージやビデオスクリーン向けコンテンツで4Kが使いやすくなりそうだ。
機器の製造、調整に使う信号発生器は、計測技術研究所(#8213)が2種の新製品を出展すると共に超小型ハンディ機を参考出展した。開発用、製造ライン用、そして現場用と全方位に対応している。同社ブースには、放送等のコンテンツ制作時に、低解像度のソース(例えば、携帯電話の動画)を用いる際の小型解像度変換器もデモされた。超解像技術を応用しており、単純なスケーリングではなく画質向上を図っている。この装置は、まだ参考出展の段階だが、小型のハンディ機であり来場者の関心が高かった。この装置のパンフレットには、画像のFFT解析結果が示されており、超解像処理の結果画像中の周波数が伸びていることが科学的に示されている。単純なスケーリングでは周波数は伸びず、超解像の威力が計測結果で示されていた。
■多メディアコンテンツビジネスへの可能性を広げる4K
PCからの4K動画出力を実現するカードはローデ・シュワルツ・ジャパン(6406)が出展した。デジタルシネマ解像度(4096x2160)でありながら、テレビ並みの60Hzに対応している。加えて、4:2:2に対応しており、豊かな色情報を再現できる。サイネージなどのPCから出画するアプリケーションで応用されると見られる。
HDTVが登場した時、この解像度を活かせるものはテレビ放送しかなかった。しかし、いま、デジタルシネマ、デジタルサイネージ、そしてネット放送といった放送規格に縛られないアウトレットが増えている。新しい映像フォーマットは、テレビ放送の枠を越えた映像応用の拡がりによって、予想より早く浸透しそうだ。
(日本大学 生産工学部 講師/映像新聞 編集委員 杉沼浩司)
計測技術研究所は、ハンディ型の4K信号発生器を参考出品した
ローデ・シュワルツはPCIeタイプ4K出力ビデオカードを出展