【コラム】International CES 2013報告(2)民生機にも4Kの波で圧縮LSIのニーズ浮上か/スマホ充電用燃料電池、M2Mの実用新製品が登場

2013.2.15 UP

ソニーが参考出展した4K民生用カムコーダはXAVCで符号化する
CESアンベイルドは、メディアのみが入場できる特別イベント

CESアンベイルドは、メディアのみが入場できる特別イベント

リリプチアン・システムズ社の燃料電池「ネクター」は、ブタン(LPG)を収めたカートリッジを用いる

リリプチアン・システムズ社の燃料電池「ネクター」は、ブタン(LPG)を収めたカートリッジを用いる

トラクドット・ラゲッジは、預けた荷物の現在位置を特定できる

トラクドット・ラゲッジは、預けた荷物の現在位置を特定できる

パロット社は、植物生育支援システム「パワーフラワー」を参考出品した

パロット社は、植物生育支援システム「パワーフラワー」を参考出品した

 インターナショナルCES(主催=米CEA/以下、CES)は、幅広い製品やサービスが並ぶ。特にサービスとハードウェアの連携は目を見張るものがある。ハードのみで物事が成り立たないのは当然だが、サービスだけでも成立しない。両方を効果的に投入して両輪とすることの重要さを再認識させられる。そして、元気な提案は比較的規模の小さな企業から現われる。一方、大企業はその資金力、開発力を投入してスタートアップでは行なえないことをやってのける。新興企業のみでは市場は回らず、大企業のみでも同じ。これもまた両輪であろう。
(日本大学 生産工学部 講師/映像新聞 論説委員 杉沼浩司)

■ホーム4K
 日本語でカムコーダーは、カメラと録画装置が一体化したものを示しており、英語としても通用する。実はこれはソニーの造語で「CAMCORDER」は、同社の日本における登録商標である。
 そのカムコーダーの盟主たるソニーが静かに参考出展したのが、民生用(アマチュア用)の4K機だ。大口径のレンズ、がっしりしたディスプレイが搭載されていることから、ハイエンド機と見られる。シートには同社が提唱する符号化(圧縮)方式XAVCを使用している事しか記されておらず、細かなスペックは不明である。同社は既に、プロ機器で4K化を推進しているが、いよいよ民生機にまで4Kの波が押し寄せてこようとしている。現時点で4K/60Pを実現するためには専用の圧縮LSIの開発が必要となる。低価格カムコーダーは、市中で部品を求めれば作れるが、4K機はそうは行かない。このような場合にこそ、大企業の資金力、技術力、開発力をおおいに発揮できると言える。

■ベンチャー大集合
 CESは、1月8日から11日の間の展示会と思われがちだが、イベントはもっと早くから始まる。7日夕方から前夜基調講演が始まるが、同日は朝から記者会見が続く。
 この7日は記者会見が続くことから「プレスデー」と呼ばれているが、ある意味それよりも重要なのが開始前々日の1月6日である。この日の夕方からマンダレー・ベイ・ホテルで開催された「CESアンベイルド」だろう。入場は報道関係者に限定されている。ホテルのボールルームに40社ほどが小さなブースを出し、新製品を披露する。ここは、中小企業に限られた出展場所ではないが、伝統的にスタートアップが多い。また、メディアの関心も高く、ここで公開された商品がCES開始日のニュースに流れることも多い。ボールルームは、出展側、取材側両方の熱気に包まれる。

■燃料電池登場
 熱気あふれる会場の隅で、より熱くなっていたのが米リリプチアン・システムズ社だ。一般向けの燃料電池の開発に成功し、間もなく発売に踏み切るという。
 同社の燃料電池「ネクター」は、SOFC(固体酸化物形燃料電池)で、ブタンを燃料とする。SOFCは、700℃から1000℃の高温度で動作するが、効率も高く最高で70%に達するとされている。
 ネクターは、ブタンガスを燃料としている。ブタンガスは、カセットコンロやキャンプのストーブそして一部の発電機や耕耘機の燃料として使われている。ネクターの場合、利用者はブタンガスを収めたカートリッジを購入し、使い終わったものを返送する。
 発電能力は、55cc(35g)のカートリッジ(同社は「ポッド」と呼称)で55000mw/hという。典型的なスマートフォンに10回以上充電できることになる。会場では、一度装着したら2週間の利用が可能としていた。なお、本体とカートリッジは、旅客機の機内持ち込みが可能である。
 ネクターは、米国の小売店「ブルックストーン」より販売され、既に同社は受注活動に入っている。価格は299.99ドルで、カートリッジは9.99ドルである。ネクターは、今夏に正式に公開され、秋口に発売開始予定である。屋外での撮影などに有用な発電装置として注目したい。

■タグが伝える到着
 昨年から感じられた動きの一つが「M2M」の浸透だ。M2M(Machine-to-Machine)とは、機械間の自動通信により何らかの処理を行うシステムを指す。昨年はこの方式への注目を、エリクソン社の首脳が基調講演で語っていた。
 今年は、製品が現れた。米グローバトラック社の「トラクドット・ラゲッジ」は、旅行時に預ける荷物が、どこにいるのかを追跡するための装置だ。携帯電話システムにつながる通信機を内蔵した小型タグで、センターに位置情報を定期的に送出する。利用者は、専用のウェブを介して、自分の荷物の居場所を確認する。
 業界の努力で、飛行機で移動の際の預け入れ荷物の紛失や誤配は減っている。しかし、これらを0にすることは難しく、利用者は自衛策を講じるしかない。このタグを購入し、年額数十ドルの利用料を支払えば、荷物がどこにあるかのほぼリアルタイム情報が手に入る。海外ロケの際の機材運搬などに活用できそうだ。

■木々は訴える
 仏パロット社からは、植木鉢に挿すことで鉢植え植物の健康状態を報告するデバイスが登場した。前出のエリクソンの講演では、植木鉢が乾くと、センサーを内蔵したデバイスがツイートする、というものだった。
 パロットは、乾燥の他に、肥料の状況、日照なども報告するデバイスを開発した。情報はタブレットで受け取るが、ここに工夫がある。タブレットでは、目的の植物の生育に関する情報が示され、現状と良好な状態との差分が明確になるようにプログラムが作られている。植物毎の、また、発育段階毎の情報が収められているところが新しい。無味乾燥の数値情報ではなく、必要な行動が画面から読み取れるため、使う楽しさもありそうだ。
 パロットは、このシステムを発売するかを調査するために今回のCESに持ち込んだという。生産が決まれば、速ければ年内にもお目見えするそうだ。

■食べ過ぎ注意
 米ハピラボスからは、肥満対策用フォーク「ハピフォーク」が登場した。フォークの動きをセンスし、食べる速度が速すぎると警告を発する。同社によると、ゆっくり食事をとれば肥満は抑えられるといい、フォークはそれを支援するものという。
 同社からは、スマートフォン用のアプリケーションも出荷されており、このアプリに健康状態や運動量などを記録する。フィットネス関連情報が可視化できることで、減量を促進するという。

■スマホは当然
 今年登場した新製品や新アイデアを見ると、スマートフォンやタブレットを情報のループのどこかに組み入れたものが多い。これまでは、情報はWebページに示されるところで終わっていた。しかし、スマートフォンを用いることで、例えば個人用に限定したり、情報自体を持ち歩くことに意味づけをしたり、迅速な反応を得たり、と範囲が拡がった。
 スマートフォンのブラウザで表示するだけであれば、従来のPCと違わない。そうではなく、スマートフォンの情報処理を活用する方向に進んでいる。これが、目立った傾向である。
 既に、情報関連のデバイスやサービスにとってスマートフォンは無視できない装置となっている。更に、スマートフォンが使えることで、情報が単なる数字や指示となることを防いでいる。彩りを添え、高度な処理を実現するためにスマートフォンの能力が活用されているとも言えよう。
 単一のデバイスを作るのは得意でも、システム化してサービスまで連携させることは、多くの大企業は苦手なようだ。スタートアップは、この点を突いている。M2Mを活かしたシステムとサービス連携がスタートアップから登場する傾向は強まりそうだ。

CESアンベイルドは、メディアのみが入場できる特別イベント

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リリプチアン・システムズ社の燃料電池「ネクター」は、ブタン(LPG)を収めたカートリッジを用いる

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トラクドット・ラゲッジは、預けた荷物の現在位置を特定できる

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パロット社は、植物生育支援システム「パワーフラワー」を参考出品した

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#interbee2019

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