【INTER BEE CONNECTEDセッション報告(6)】「キー局の動画配信2016」各局、次のステージへ。TVerの今後が気になる?!
2017.2.8 UP
今年も各局の見逃し配信と共通ポータルTVerが出揃った
映像サービスが続々出てくる中で、テレビ局の優位性を動画配信でいかに活用するかが問われていく
昨年11月に開催したInter BEE会場で開催されたINTER BEE CONNECTED企画セッション。二日目(11月19日)の目玉といえる「キー局の動画配信2016」。毎年行われ、INTER BEE CONNECTEDを象徴するセッションとなった本企画は、今年増席された会場にさらに来場者が押し寄せ、210名分の座席が埋まったうえに立ち見も大勢になった。前回、各局の見逃し配信と共通ポータルTVerが出揃ったうえで、この一年で各局が新たなステージを迎えたことがよくわかるセッションだった。
(コピーライター/メディアコンサルタント 境 治)
■新たな動画サービスが多数登場した1年
まずモデレーターのワイズメディア・塚本幹夫氏から、議論の前提の整理として、この一年の動きがスライドで提示された。昨年9月にNetflixとAmazonがSVODをサービスインし、今年はDAZNとスポナビライブがスポーツの定額配信をスタートさせ、さらにAbemaTVが始動するなど新しいタイプの動画サービスがはじまった。それを受けて、各キー局が最近の動きをプレゼンテーションした。
■SVODに本格参入したFOD
フジテレビ・野村和生氏はFOD(フジテレビオンデマンド)がこの一年広げてきたサービス内容を説明した。見逃し配信「フジテレビプラス7」の対象番組を14番組から24番組に大きく増やしたほか広告出し分け機能を実装。電子書籍事業を強化した一方でSVODにも本格参入し、オリジナル番組も投入するなどサービス内容の幅を大きく拡張した。最近はVRにも挑戦し多様な楽しみ方ができる配信事業となっている。
■リーチの最大化を図るテレビ東京
続いてテレビ東京コミュニケーションズ・蜷川新治郎氏が「テレ東っぽさ」を軸に配信事業を展開していることをプレゼンした。全方位外交型で置ける場所にはコンテンツをどんどん置いていきリーチの最大化を図っていること、「放送⇔プロモーション⇔マネタイズ」のエコシステム構築をめざしていることなどを説明した。
■TBS「支店主義」から「全部本店主義」へ転換
TBS・田澤保之氏は、映像配信サービスを10月に大幅にリニューアルし、これまでの他社サービスに番組を提供して自社ではサービスを持たない「支店主義」から大きく方向転換した旨を説明した。見逃し配信のTBS FREEとは別にプレミアム見放題のSVODサービスを立ち上げ、月額900円で同社の豊富なドラマアーカイブを視聴することができる。900円のうち都度課金に使える分が500円分あるので、結果的にはリーズナブル。利用者は非常な勢いで伸びているという。本店主義への転換というより、「全部本店主義」と田澤氏は解説した。
■「5メディア戦略」を掲げるテレビ朝日
テレビ朝日・大場洋士氏は、昨年のこの場で明確に戦略を示せなかったのはもろもろ潜航中だったと話をはじめた。AbemaTVが準備中だったので言えなかった全体戦略をあらためて解説。地上波・BS・CSに加えてインターネット・メディアシティ(六本木ヒルズやEXシアターなどイベント会場)の5つのメディアを組合せていく「5メディア戦略」を掲げ、その中で動画配信をA-VODからT-VOD、S-VODまで、他社との協業によって展開していることがプレゼンされた。
■動画配信のリニューアルを準備中の日本テレビ
日本テレビ・太田正仁氏は三年連続の登壇となった。毎年整理された戦略をわかりやすく説明してくれる太田氏は、見逃しサービスTADAや定額配信・huluの現状と考え方を披露した。huluは米国メディアから買収して以降も順調に会員数が伸び、今年3月の130万人からさらに大きく増えていること、スマートデバイスのユーザーが半数を占める一方で視聴時間ではテレビの利用が長いことがわかったことをプレゼン。また動画配信について大きなリニューアルを準備中であることも明かした。
■順調な伸びを示すTVer
TVerについてはテレビ東京コミュニケーションズの蜷川氏が再びマイクを握って説明。AbemaTVの勢いに隠れてしまっているが、アプリのダウンロード数は順調に伸びて400万を突破したことを報告した。
■テレビ局の優位性をどう活かすか
後半は塚本氏のモデレーションによるディスカッション。SVODについての考え方や海外事業者への対抗策、配信とタイムシフト視聴率の関係など次々にテーマを投げかけて切り込んでいった。最後に、動画サービスの利用を比較したデータをスライドで見せ、TVerのMAU(月間アクティブユーザー)が低いことを示した。「とっておきの質問」と称して「TVerを今後どうするのか」と鋭く切り込んだが、各局とも微妙な反応。太田氏は「TVerだけでは難しい」と答えて共同で展開するサービスの困難さがにじんだ。
AbemaTVが登場した一方でLINEがライブ配信サービスをはじめたりC Channelのようなネット発の映像サービスが続々出てくる中で、テレビ局の優位性を動画配信でいかに活用するか、TVerのみならず今後問われていきそうだ。各局の進化と、この領域の難しさが同時に浮き彫りになったセッションだった。
今年も各局の見逃し配信と共通ポータルTVerが出揃った
映像サービスが続々出てくる中で、テレビ局の優位性を動画配信でいかに活用するかが問われていく