私が見た
2014.4.22 UP
GLOBAL INDUSTRY EVENTSエリアのInter BEEブース
企業間の吸収合併の影響で企業のイメージカラーも一変
オープニングセレモニーでのGordon Smith NAB会長の挨拶
Future Parkで開かれたNAB Labsのプレスコンファレンス
世界の放送関連展示会として、5月韓国ソウルの”KOBA”、8月の中国北京の”BIRTV”、9月のオランダアムステルダムでの”IBC”、11月の千葉幕張メッセでのInter BEE、そしてそれらの集大成ともいえる世界最大のコンベンション”NAB SHOW 2014”が、4月5日から10日までカジノと遊興の街ラスベガスのコンベンションセンター(LVCC)で盛大に開催された。世界的に放送メディアはデジタル化、HDTV化を越え、通信との融合が進み、映画やエンターテインメントとも連携する新たな展開が始まっている。今回のNABでは、それらのメディア状況を反映するように大画面向きの超高精細度映像やスマートフォンやタブレットに向けたマルチスクリーン対応の多種多彩な最新技術が会場いっぱいに展開されていた。これから4回にわたり、今回のNABにおける技術動向を紹介するが、本稿では概要を報告する。
欧州に見る財政・通貨不安、ウクライナに端を発した冷戦時代を思い起こさせる不穏な国際情勢、鈍化傾向を見せ始めた中国経済、わが国を取り巻く厳しい東アジア状況といまだ先行き不透明な経済状況の中、今回のNABは開かれた。報じられるところでは、156の国や地域から1550を超える企業・団体が出展し、世界各国から94,000人を数える来場者を迎え大盛況だった。ここしばらく厳しい環境下にあるわが国電子産業界だが、これまで長年にわたり世界の放送技術の成長、発展をリードしてきた日本からの出展は今回も堅調で、会場を廻ってみた印象では日本からの企業関係者、見学者、メディア関係取材者も一時期の低迷状況からやや回復しつつある感があった。
様々な規模とレイアウトの1500を越える展示ブースは、LVCCのノース、セントラル、サゥスホール、屋外展示場いっぱいに展開され、多種多彩な最新技術やコンテンツが展示公開されていた。今回、NABの直前に有名でブランド力の高い企業の統合や吸収・合併があり、従来と比べ、ブースの配置やレイアウト、イメージカラーが変わり、会場を廻ってみてこれまでとやや違った印象が感じられた。
最も広いセントラルホールのエントランスに近い西側にはヤマハやSTUDERなどプロオーディオ部門の中小規模のブースが多く配置され、右側奥手の”GLOBAL INDUSTRY EVENTS”コーナーにInter BEE、KOBA、CCBNなどのブースが開設されそれぞれのイベントのPR活動が行われていた。同ホール中央部の眺望の開けた地の利の良いエリアには、従来よりさらに広くなり場内随一と言えるキヤノンとパナソニックが世界をリードする最新技術を披瀝し、その周辺に日立国際電気、朋栄、JVCケンウッドなど日本の中堅企業が集中し、その近辺では欧州系のARRIが高精細・高品質のカメラやレンズ系を、急成長のGoproが超小型のアクションカメラを、ベルギーパビリオンのIntoPixやBarco Silexなどが符号化技術などを公開していた。
同ホールの中ほどにはフジフィルム、池上通信機、アストロデザイン、昭特製作所、ニコンなどの日系企業が多く配置され、一番奥の東コーナーには世界のリーディングカンパニーのソニーが場内随一と言える巨大なブースを構え多種多彩な4K超高精細映像関連技術を大規模に公開し、その近くにリーダー電子やナックイメージテクノロジー、映像新聞のブースが点在していた。その他、同ホールには多くの米国・欧州系企業の中小ブースが数多く並んでいた。
このセントラルホールとサウスホールの間には広大な屋外展示場があり、大きな中継車や衛星通信用地上局などが並んでいたが例年よりやや数が少なくなった感があった。残りの広いスペースには膨大な各出展企業の展示機材、運搬用コンテナなどが一見すると雑然と並べられていた。
サウスホールは上下2フロアからなる長大な倉庫のような建物で、1階エントランス近くには多くの企業との吸収合併、連携により、今や巨大企業となったBlackmagic Designが広大なブースを構え、今回も業界にとって刺激的な出展をしていた。その横に例年通りGrass valleyの大きなブースが並んでいたが、つい先日、親会社のベルデンによりミランダと一体化されたばかりで、企業イメージカラーがグリーンから紫色に変わり雰囲気も去年までとがらりと変わっていた。その隣では、最近デジタルシネマで急成長し、いつも特異なレイアウト、雰囲気で評判になるRed Digital Cinemaが広いブースで華麗な展示をしていた。それらの近くには制作系のAJA、QuantelやAutodeskなどがポスプロ機器と共にそれらを使って制作した高精細度コンテンツの実演公開をしていた。やや中ほどでは計測技術研究所が特異な超解像技術を活用した4K/8K技術を公開し、Digital Rapidsが最近トレンドのファイルベースワークフロー技術などの実演公開をしていた。サウスホール2階の西側エントランス付近では、常連のAvidが例年ながら華麗なプレゼンテーションをし、Harmonicも最新のコーデック関連技術を、Dolbyが特徴ある映像・音響システムの公開をしていた。中寄りでNTTグループは日本が誇る最新の多種多彩な符号化・配信技術を公開し、東側には小規模のブースが数多く並び、AlteraではFPGA応用技術を、DEK Techなどが4K関連技術を公開していた。
ノースホールはセントラルホールと同規模の広さで、西側エントランス近くにRegistration端末が数多く並ぶ受付コーナーがあり、その奥手に広大な昨今トレンドの”CONNECTED Media World”が開設され、CISCOやIntel Partner Pavilionなどがマルチスクリーンサービスなどのセミナーやシステム展示を行っていた。ホール中間部には、Harris Broadcastから名称を変えイメージを一新したImagine Communicationsが多種多彩な展示物を並べ、前述のようにベルデンに買収されGrass valleyと一体化しイメージカラーも一変したMiranda、さらにQuantelに吸収合併されたSnellのブース、またEvertzやRoss Videoなどの有名企業が広いブースを構え、さらに中堅どころのTektronixやFPGAの創業社のXilinxなどが最新機器の展示をしていた。右手奥には恒例の”NAB LABS FUTURES PARK”が開設され、NHKは広いスペースで8K SHVシステムやコンテンツ上映に加え、昨年から始まったハイブリッドキャストの実演公開もしていた。最近常連のZAXEL(日)は8K超解像技術などを公開し、ETRI(韓国電子通信院)、4EVER PROJECT、RIT、EBUなどの研究機関がそれぞれ特徴ある最新の研究成果を公開していた。
NAB SHOWはこれらの機器展示だけでなく多種多彩なイベントやコンファレンスも行われている。機器展示に先立ち、”Technology Summit on Cinema”のセッションも開かれ活発な議論がなされ、有識者によるキーノートスピーチやパネル討論もあり、”Broadcast Engineering Conference”などでは専門家からの技術報告もなされていた。前者については本Magazineの別稿を参照されたい。後者については、世界各国からの発表の中で、NHKから「SHV 衛星放送」や「放送と通信を連携するハイブリッドキャスト」が、工学院大学から「4K/8K超解像技術」などの講演が行われていた。 機器展示会初日の7日朝には、LVCCに隣接するラスベガスホテルにてオープニングセレモニーが行われ、就任5年目になるGordon Smith会長が進展する放送メディアの新たな展開への期待とFCCの規制に対する懸念を語っていた。例年趣向を凝らしている人気イベントだが今年はやや地味で、引き続きジャーナリストJorge Ramos 氏へのNAB Awardの表彰とHaim Savan氏の基調講演が行われた。同じ日の夕刻には、上述のFUTURE PARKで、NAB LABS主催によるプレスコンファレンスが開かれ、NHK技研の黒田副所長のSHVについての講演やETRI、RITなどから最近の研究報告などがなされた。
今大会の技術的動向について概観すると、4K/8Kの超高精細度映像、それらを支える多種多様なカメラやディスプレイ、制作機器、そしてあらゆる分野のベースを支える符号化技術やネットと連携するIP化技術、さらにマルチスクリーンサービスなどで、次号以降で順次紹介して行きたい。
GLOBAL INDUSTRY EVENTSエリアのInter BEEブース
企業間の吸収合併の影響で企業のイメージカラーも一変
オープニングセレモニーでのGordon Smith NAB会長の挨拶
Future Parkで開かれたNAB Labsのプレスコンファレンス