【INTER BEE CONNECTED 2018 セッションレポート】「マルチスクリーン時代の動画視聴者像〜電通とビデオリサーチによる最新分析」〜若者はネット動画をどう視聴するか?
2018.12.13 UP
メディア利用時間を面積で示すユニークな図解
ソーシャルシークエンス分析で男子高校生のメディア生活を見える化
年を追うごとにM1層の就寝時間が早まっている
INTER BEE CONNECTEDでは電通メディアイノベーションラボ統括責任者・奥律哉氏がコーディネートするセッションが毎年の名物になりつつあるが、今年も11月14日、初日最初の枠で「マルチスクリーン時代の動画視聴者像」と題して行われた。昨年に続き、電通とビデオリサーチによる最新分析が披露され、いっそう興味深い分析結果を見ることができたのでレポートしよう。
(コピーライター/メディアコンサルタント 境治)
セッションではまず奥氏が2018年のメディア接触を概観し、電通メディアイノベーションラボ・メディアイノベーション研究部長の美和晃氏がネット動画視聴の現状がひと目でわかるデータを見せてくれた。各メディアの利用時間を面積で表すユニークな表現で、見えてきたのはネット動画視聴時間が若い世代ほど多く、またその主な舞台は宅外ではなく宅内であることだ。モバイル動画というと外で見るイメージがあるが実態は逆なのだ。
続いてビデオリサーチ・ひと研究所主任研究員、渡辺庸人氏が、昨年も披露した「ソーシャルシークエンス分析」をさらに深く掘り下げて分析結果を見せた。人びとの生活行動とセットでメディア接触を分析するこの手法を、9種類のクラスター(CL)に分類してそれぞれのネット動画視聴を詳しく見ていった。そうすると男子高校生でははっきりとスマホでの動画視聴がテレビ視聴に匹敵するほど多くなっているなど、若い世代ほどネット動画視聴が大きな割合を示すことがわかった。これについて渡辺氏とともに登壇したビデオリサーチ・ソリューション事業局エグゼクティブフェロー石松俊之氏は「これまでの調査ではネット利用のうち14〜5%が動画視聴だったのが、若い世代ではもうその感覚では済まなくなっている。男女差や細かな年齢差もある中、若い人びとにどんな動画体験を提供するかがメディア事業者にとっては重要ではないか」と解説した。
次に「ソーシャルシークエンス分析」からテレビ受像機でのネット動画視聴の実態を探っていく。ネット接続されたテレビ受像機でYouTubeやNetflixなどネット動画はどんな層がどれくらい見ているのか。その傾向が顕著だったのは3つのクラスターで、それぞれの特徴は大きく異なることがわかってきた。不規則生活パターンのCL3は主に学生やフリーターなどでYouTubeやニコニコ動画をどうせなら大画面でとテレビで見ることが多いようだ。外泊徹夜ありパターンのCL5は労務作業職や販売サービス職が中心で、YouTubeの他にamazonプライムの利用度が高い。ゴールデンタイムに家にいないため、面白い番組を探して利用すると思われる。在宅・テレビ専念視聴パターンのCL6は50歳以上が7割を占めており主婦や無職の層だ。YouTubeだけでなくニコニコ動画とamazonプライムを利用しているのは、テレビのヘビーユーザーでありリテラシーも高い層と言えそうだ。このように「テレビ受像機でのネット動画視聴」は一部の層にははっきり出てきていることがわかった。
最後に非常に不思議な指摘があった。2009年と比べて2018年の若者層はテレビのリアルタイム視聴が減っている。減った時間はネットに奪われたのだろうか?22時台、23時台にそれぞれ何をしているかの調査から見えたのは、一部はやはりネットの時間が増えているのだが、それより「すいみん」の時間が2009年より増えていたのだ。男女ともこの傾向があり、ということは「若者は早く寝るようになった」ということになる。果たしてこれは、そのまま受け止めていいのか、それとももっと掘り下げると別の何かがわかるのか。そんな疑問の投げかけでセッションは終わった。若者は早寝するようになったのか、追求してみたい疑問だと思った。
INTER BEE CONNECTED恒例となったこのセッション。来年もこの続きが見られるかどうかは何とも言えないが、おのずと期待してしまう。若者の就寝時間の深掘り結果も含めて、来年を待ちたいところだ。
メディア利用時間を面積で示すユニークな図解
ソーシャルシークエンス分析で男子高校生のメディア生活を見える化
年を追うごとにM1層の就寝時間が早まっている