【NAB Show 2013】＜杉沼浩司氏インタビュー＞ Technology Summit on Cinema、オープニングセッションの概要を聞く

　映像新聞 論説委員、日本大学生産工学部講師の杉沼浩司氏に、NAB Show 2013の前半に開催されたTechnology Summit on Cinema（4/6、7）と、オープニングセッション（4/8）について聞いた。

■「次世代の技術」をテーマに掲げたTechnology Summit on Cinema
　毎年、NAB Showが開催する月曜日の前の土曜日、日曜日の２日間にわたり開催されるTechnology Summit on Cinemaの今年のテーマは、「Advances in Image and Sound」として、デジタルシネマにおける次世代の映像、サウンドの技術についてさまざまな討議がなされた。
　映像では、ハイフレームレート、解像度の拡大、オーディオに関する話題が中心となった。中でも、ハイフレームレートには大きな時間がさかれ、ジェームズ・キャメロン監督が自ら制作したチュートリアル用のビデオに出演してハイフレームレートの意義をアピールした。
　ビデオでは、映画のセットで、24fps、48fps、60fpsで撮影した映像の比較を行った。ハイフレームレートの課題はデータ量が大きな課題となる。現在の映画撮影で1日2TBの量が２倍から2.5倍になる。今後はこのデータ量のマネジメントがどれだけ効率的にできるかが課題となりそうだ。
　今年のオーディオは多チャンネル化ではなく、オブジェクトレンダリングという音源を合成して作るという手法や、波面合成技術など、従来の多チャンネルとは異なる技術も紹介され、新次元の音響への方向性が見えてきた。
　次世代のデジタルシネマという点では、「Advancing Cameras for Cinema」と呼ぶセッションで、NHK放送技術研究所の山下誉行主任研究員から、 8K120P対応のカメラの小型化の開発が進んでいるとの説明があった。撮像素子については、CMOS撮像素子の根幹技術を開発した現ダートマス大学（Thaye School of Engineering at Dartmouth）のEric Fossum教授がこれまでとは異なる原理の撮像素子開発の概要の紹介があった。 量子効果を用いた新次元のセンサを開発しているという。

■「放送業界は機会を生かして新たなビジネスを」
　ゴードン・スミス会長の講演では、最初にこの一年の状況として業界への新たな規制について触れ「我々が視聴者、聴取者に不利益をもたらすと考える新たな規制を抑止し、放送事業者の関心を保護するよう法案を整えた」と議会およびFCCとの間の懸案を処理したことを示した。一方で、モバイルTVが消費者が求める「いつでも、どこでも」という要求を満たす装置、サービスであることに触れ「放送事業者の前に出される新しい技術プラットフォームという機会を掴まなければ、我々は競合する業界に成功の鍵を渡すことになる」として、放送事業者が機会を活かして新しいビジネスに進むことを鼓舞した。
　中でも、モバイルTVについては、新たに25局が増え、現在すでに1０0局以上がサービスを開始しているという。ボルチモア、ジャクソンビル、ソルトレークシティといった大都市でサービスが始まっており、「テレビ放送事業者は、新しい標準へ進むことの難しさと機会を真剣に考えるべきだ。そして、視聴者によりよいサービスを届ける、モバイル業界との競争をし、新しい収入源の確保するための柔軟性を持つ必要がある」として、柔軟かつ積極的にビジネスに向かうことを求めた。また、 携帯電話事業者であるSprintが、スマートフォンにラジオ放送受信機能を組み込むことが紹介され、「状況はハイブリッドへ向かっている」とSmith会長は指摘し、「放送事業者は、たとえリスクが感じられるとしても、モバイル機能を改善し事業者のビジネスを進めるために積極的に新しい技術標準を取りむか」とのべ放送局の関係者に、変化する放送事業の周辺環境を見極め、挑戦していくことを強く求めた。
　スミス会長に続いて講演に立ったGreg Walden下院議員は、 FCCのGenachowski委員長が行って来た改革に一定の評価を下しつつも、より強力な改革を求め、そのためにも法律でそれを求めることが必要であると説明した。同氏は、今後もスペクトラム問題、コンテンツ配信、FCC改革などの案件で放送事業者と協調してゆくことを約束し講演を終えた。