私が見た"Inter BEE 2014"動向(その3)コンテンツ制作系
2014.12.11 UP
4Kライブ制作系の実演(ソニー)
多種多彩な4K対応機器類を展示(朋栄)
4K対応となった編集制作系(Grass Valley)
4K対応になったスイッチャー系(BlackMagic Design)
(その2)では多種多彩な4K/8Kカメラ、高感度・高速度カメラについて紹介した。(その3)では高画質・高機能、ファイルベース化が進むコンテンツ制作系について概要を紹介したい。
世界の場でコンテンツ制作界をリードし、常に最先端技術に挑戦してきたクオンテルは、NAB2014で初めて高品質カラー&フィニッシングシステムシステム”Pablo Rio”による4K/60pおよび8K/24p編集加工処理を公開した。そして今回、IBCで初公開した複数の素材、ジョブを共有できるサーバ”Genetic Engineering 2”と2台の”Pablo Rio 4K”を連携し、複数のプロジェクトの4K/60p映像素材を使い高度でクリエイティブな編集ワークの実演をしていた。GE2を使うことにより、システム稼働率が上がり制作作業の効率性も改善される。その上、今回は待望のリアルタイムでの8K/60pワークが登場した。8Kとは思えない高いパフォーマンスでストレスを感じさせない編集作業が行われ、制作ワークの様子や作成された8Kコンテンツが高精細度8Kモニターに表示されていた。今後、本格的な8K映像の加工、編集が進んで行くと期待される。もうひとつ注目の出展物はスポーツハイライトシステム”Live Touch”で、バスケットボール競技の映像素材を使い実演をしていた。ハイライトをオンザフライで収録し、再生とスローモーションを行っている間に、サーバに収録された素材の同時編集が可能で、ライブが終われば即時再生することができる。
オートデスクはビジュアルエフェクト、エディット、カラーグレーディングをパッケージ化した映像フィニッシングセット”Flame Premium 2015”による制作事例のプレゼンテーションをしていた。新バージョンはDual GPU対応と機能が向上し4K対応になり、新しいトラッキングツールも搭載されパワフルになった。またポストプロダクションの強力なソリューション”Smoke 2015”は機能が向上し、さらにゲーム、映画、モーショングラフィックス向けモデリング、レンダリングソリューションの”3ds Max 2015”は効率的で新しいツールで高速化され、複雑な高解像度の作業効率性が向上した。
アビッドは従来からのテーマである”Avid Everywhere”の次のステップとして”Resolution Independence”を掲げ、既存のストレージやネットワーク環境のままで、多くの製品を4K高解像度メディアに対応するようにした。4K対応になった”Media Composer”により4K60pの取込み、編集、出力のデモをしていた。同社製品は池上通信機、報映産業、フォトロンなど多くのパートナーでも公開されていた。
ソニーは4Kライブ制作システムとして、4KスイッチャーとXAVCフォーマットを採用し4KからのHD映像の切り出し、4Kの記録、追いかけ再生も可能な4K/HDライブサーバを展示していた。ファイルベースソリューションとしては、報道ワークフローを支援する編集システム”Sonaps”に加え、番組やCM制作の新たなワークフローを一層高画質で効率化するXAVCベースの提案もしていた。さらにワークフローに欠かせないコンテンツマネージメントの提案と、オプティカルディスクによるアーカイブ系の展示もしていた。また急速に進む4K制作に対応すべく、4K/60pのXAVC映像を手軽に再生できるコンパクトな4Kメモリープレイヤーも技術展示していた。
パナソニックは次世代スタジオサブシステムを組み、ネットワーク対応製品や高速・高効率なファイルベースのワークフローなど様々なソリューションを展示していた。核になる新型4ME/3MEライブビデオスイッチャーは、3G/4K対応、最大72入力/42出力、全入力にフレームシンクロナイザー、カラーコレクターを装備し、拡張性と高信頼性で大型番組にも対応できる。
池上通信機はスイッチャー系として4K対応マルチプラットフォームシリーズを出展していた。ユニットの組み合わせにより規模にあわせシステムアップでき、入出力系とも最大144、コンバータ、プロセスモジュールの実装でフレームシンクロナイザー、3G/HD/SD間の信号変換、カラーコレクター、画面分割機能にも対応し、4M/Eを連動することで4Kにも対応する。ファイルベースシステムとしてトータルソリューションの”iSTEP+”を公開していたが、収録・送出系のファイルベース化、ファイルベース素材と報道支援システムとの連携、既存のスイッチャーとの連動も可能になり収録中の追いかけ編集にも対応する。
朋栄は4K時代を支える豊富な制作機器類を並べていた。スイッチャー系は、拡張性に優れ4K/HDマルチフォーマットに対応する2M/Eスイッチャーで、4K対応の様々な機能を搭載しスポーツ・ニュースサブ、スタジオ制作サブ、イベント用などをターゲットにしている。システムの核として柔軟に活用可能で4K/8Kにも対応のルーティングスイッチャーMFRシリーズも展示していた。さらにIP時代に応え同一エンコーダから出力された2系統のIP信号を常時監視し、異状時にシームレスに他方へ切り替え復旧するIPチェンジオーバスイッチャーも公開していた。高度な信号処理をするプロセッサ系では、リアルタイムに時空間補間により超解像化するHD→4Kアップコンバータや4K/HD/SD対応のフレームレートコンバータ、カラーコレクターやFS機能を搭載した5系統のアップ/ダウン/クロスコンバータなどを展示していた。ファイルベースソリューションとしては、制作支援システムとして自由度が高く階層型クラウド管理により新たなデータ管理も盛り込んだ”Media Concierge”を提案していた。
アストロデザインは4K/8Kのコンテンツ制作に有効な多彩な機器やソリューションとして、8K/4K/2Kが自由に扱えるクロスコンバータ、BT.2020対応の色域変換装置と4K波形モニターなど各種製品を展示していた。また次世代伝送方式コーデック関連で、MMT 多重化方式のストリームの収録・再生および簡易的なストリーム解析も可能で、MMT関連機器の開発、ステムの検証などにも使えるNHKと共同開発のMMT信号発生器も展示していた。
計測技術研究所は、従来のエッジ強調による高画質化処理と違いフレーム内非線形信号処理することで原画像にない周波数成分を復元する周波数拡張方式FE(Frequency Expand)を採用した超解像技術を活用し、HD→4K、4K→8Kへ拡大変換する際、映像素材の解像度感や質感を自然でリアルに改善することができる技術を公開していた。4K、8Kの利用範囲を一層広げるソリューションである。
グラスバレーはデジタル時代の要請に応える多種多彩な機器、ソリューションを出展していた。スイッチャー系はモジュラー式プロセスエンジンを採用し新モデルの3G対応スイッチャーフレームとミドルレンジのスイッチャーを組み合わせ、M/E列を分割利用し連動機能を使用することで、ハードやソフトオプションを追加することなく4K制作にも対応可能となった。ノンリニア編集系EDIUS 7は、64bitネイティブへ進化し、4Kプロセスエンンジン、AVC-UltraやXAVCへの対応など新機能が搭載され、4K/60pの編集が自由に行えるようになった。またEDIUSターンキーシステムに4K対応が加わり快適な4K制作環境が構築できるようになり、さらに8K/60pにも対応するモデルも参考出品されていた。
ブラックマジックデザインも多種多彩な機器を展示していたが、注目は4K対応になったATEMEのスイッチャー”2M/E Studio 4K”である。6G SDIおよび4K HDMI入力を搭載し、SD/HD/U HDの解像度で、クロマキーやワイプ、DVEなど多彩なイフェクト、高品質のトランジッションにリアルタイムで対応可能になった。また、廉価ながら12G-SDI入力を搭載しSD、HD、U HD/60pに対応する新型の15.6”型ラックマウントのスマートビュー4Kモニター、また解像度が異なる4Kまでの映像を混在し、画面構成が自由に設定でき最大16系統を表示できるマルチモニターなども展示していた。
アドビシステムズとIntelは共同ブースで、多彩なファイルフォーマットへネイティブに対応し4K制作が強化され、業界随一の実績を誇る”Adobe Premiere Pro CCによるプレゼンテーションを大画面ディスプレイを使いデモし、大勢の見学者を集めていた。
映像技術ジャーナリスト(Ph.D.)石田武久
4Kライブ制作系の実演(ソニー)
多種多彩な4K対応機器類を展示(朋栄)
4K対応となった編集制作系(Grass Valley)
4K対応になったスイッチャー系(BlackMagic Design)