私が見た”IBC 2014”技術動向(その2)

2014.10.7 UP

多種多彩な制作機器を並べた朋栄
高度で多彩なシステムを公開したグラスバレー

高度で多彩なシステムを公開したグラスバレー

Pablo Rio 4Kによるワークフローの実演(クオンテル)

Pablo Rio 4Kによるワークフローの実演(クオンテル)

高度で先端的な符号化、配信技術を公開(NTTグループ)

高度で先端的な符号化、配信技術を公開(NTTグループ)

劣悪なIP環境での伝送品質を改善するソフトを公開(Zixi)

劣悪なIP環境での伝送品質を改善するソフトを公開(Zixi)

 (その1)ではIBCの全体状況と主に成長目覚しいカメラ系の動向について紹介した。今回はファイルベース化が進み、ネットワーク化により高度多様化しているコンテンツ制作系・配信系とあらゆる分野におけるベースとなっている符号化技術について概略を紹介してみたい。

朋栄は昨今のデジタル時代、急速な4Kの進展、IP化に対応する多種多彩な制作系機器を出展していた。主力のスイッチャー系では、多彩な機能を搭載し4K/HD/SDに対応する2M/Eモデル、最大256×256~16×16間で柔軟に活用できる3G/HD/SD対応ルーティングスイッチャー、さらにIP環境に応えるTSおよびTS over IP信号に対応したシームレスなチェンジオーバースイッチャーなどである。高度なデジタル信号処理に対応するプロセッサー系では、4K/HD/SD対応のフレームレートコンバータ、HDをリアルタイムに4Kに変換できる超解像4Kアップコンバータ、5系統のアップ/ダウン/クロスコンバート可能なマルチチャンネルシグナルプロセッサ、4K対応のIPエンコーダ/デコーダなど多彩である。
パナソニックの制作系の注目は、HD/SDマルチに対応し、SDI×32入力、16出力で、多彩なトランジッション効果が可能なDVEをME毎に4系統と豊富な機能を装備している2MEライブスイッチャーである。今後、3ME、4MEへと機能アップを予定しており、次世代制作系の核として期待される。4K制作ワークフローとしては、パートナーと連携し、編集系にAdobeの”PremierePro CC”とカラーグレーディングに”Filmlight”の”Baselight”を組み合わせたシステムの実演をしていた。
ソニーは、XAVC Long Gopフォーマットによるノンリニア編集ワークフローやライブ配信の実演に加え、4Kライブ制作コーナーではワールドカップサッカー映像の制作ワークフローと2台の4Kカメラで撮影した超ワイドなフィールド全体の映像から任意の位置、大きさでHD映像を切り出す実演もしていた。またアムステルダム市内やルクセンブルグと会場をつなぎ4Kによる IPライブ中継を公開していた。
Grass Valleyは4K対応をメインに多種多彩なシステムを展示していた。スイッチャー系は、3G対応スイッチャーフレーム”K Frame”を核にハイエンドの4K対応”Kayenne”と中位レベルの”Karrera”を、 放送インフラのIP化を視野にベースバンドからIP化へ段階的移行を可能にするルーティングスイッチャーを展示していた。ノンリニア編集系の最新バージョン”EDIUS 7”はAVC UltraやXAVCなど最新コーデックに対応し、4K対応エンジン搭載により4K/60pのリアルタイム編集が可能になった。ファイルベースのリプレイシステム”K2 Dyno”は、新世代のK2 Summit 3Gサーバと組み合わせ、6倍速や4K/U HD/HDリアルタイムスケーリングをサポートするようになった。

Blackmagic designは斬新的ながら低価格路線で業界に衝撃を与えている多種多様な機器、システムを展示していた。ハイエンドのスイッチャー”2M/E Production Studio”は4K対応になった。6G SDIおよび4K HDMI入力を搭載し、2系統のマルチビュー出力を持ち2台のスクリーンで最大16CH入力をモニターできる。SD/HD/U HDまでの解像度で、クロマキーやワイプ、DVEなど多彩なイフェクト、高品質のトランジッションにリアルタイムで対応する放送品質のプロダクションスイッチャーである。その他、SD/HD/U HDまでの映像のキャプチャーと再生が可能なSSDレコーダ”Hyper Deck Studio Pro”、 6G SDI、HDMI、アナログ系にも対応しU HDワークフローへの移行を支援する各種ミニコンバータ、12G SDIを搭載し4K/HD/SD映像や各種信号波形をチェックできる”Smart View”モニター、最大16系統のSD/HD/U HD信号が混在できるマルチビュアモニターなど多彩だった。
コンテンツ制作界大御所のQuantelは、時代に添う多彩な制作システムを公開していた。他社に先駆け取り組んでいる4K対応カラー&フィニッシングシステム”Pablo Rio 4K“ 2台と素材共有サーバ”GE 2”を連携し、FIFAワールドカップサッカーの2系統の4K素材を取り込み、スピーディな編集作業の実演を公開していた。またスポーツ番組で迅速にハイライトシーンを選択再生できる新製品の”Live Touch”システムにより、バスケットボール競技映像を素材にした実演もしていた。同社と共にコンテンツ業界で高い実績を上げているAutodeskは、従来からのクリエイティブな環境と効率的なフィニッシングワークフローを継承しつつ、50p、60pでの4K素材のリアルタイム再生を可能とし、U HDの色空間BTA 2020に対応できるようになった最新版ハイエンドのVFXフィニッシングシステム”Flame Premium 2015”を使い、映画「ゼロ・グラビティ」で使われた制作手法などの事例紹介をし評判になっていた。

 デジタル時代の撮影、記録、編集、配信、伝送などあらゆるプロセスにおいて、効率的に信号処理する符号化は不可欠になっている。とりわけ4K、8Kのように高精細度化が進む状況では、従来以上に重要性が増し、高度で多様な方式が開発され、多くのブースで多彩な展示がなされていた。
NTTグループは高度なサービスが可能になる次世代トランスポート技術MMTを、また新開発の高性能誤り訂正技術を使いIPネットワーク系でパケットロスがあっても高い伝送品質が保てる高信頼性の映像伝送の実演を公開していた。異なる経路で伝送しパケットロスが生じたらシームレスに他方に切り替え高信頼のIP伝送を可能にするシステムも公開していた。さらに、4K 60p 422 HEVCコーデックとして、Windows環境で操作できるトランスコードアプリケーションと、業務用入出力端子を装備し蓄積/再生機能を持つデコーダも展示していた。
NECはCS 4K放送用に使われている4K/60p、H.265/HEVC対応のリアルタイムエンコーダ、デコーダを出展していた。主なスペックはQFHD、59.94p/60p/50p対応で、H.265符合化で40Mbpsである。同装置を使い英国(BBCと共同)とブラジル・リオデジャネイロで行った4K/60p地上波ライブ放送の実証実験のことも報じられていたが、世界的に4K放送の機運が高まっていることを実感させた。

Harmonicは多様な機能、柔軟な運用性と広範な拡張性を実現するバーチャル環境でのアーキテクチャー”VOS”によるリアルタイムのU HD/4Kエンコーディングとストリーミングワークフローと、共有サーバ”MediaGrid”によるコラボレーション編集と4K編集を、ストリームパッケージ/サーバ”ProMedia Origin”によるマルチスクリーン向けライブやVOD、タイムシフトサービスなど多彩な展示をしていた。
intoPIXは、HD/4K/8Kなどの多様な解像度で高フレームレートにも対応し、圧縮伸長を繰り返しても画質劣化がほとんど認められず遅延量も小さく大変軽い圧縮技術”TICO”と、JPEG2000による低遅延の4K、8Kコーデックや小形JPEG 2000コーデックボードなどを展示していた。Barnfindは光多重伝送装置”Barn One”を使い一本の光ファイバーで遅延とジッターがない非圧縮4K/60p伝送を公開していた。
Zixiは劣悪なIPネットワーク環境で発生するパケットロスを修復し映像・音声の欠落を軽減する品質向上ソフト”Zixi”を公開していた。JVC KenwoodやThomsonのブースでもこのソフトをカメラに実装し、撮影した映像を劣悪環境のIP回線で送っても安定して伝送できる実演をしていた。その他にも符号化関係技術として、2nd スクリーン向けのU HD対応HEVCの画質評価、クラウド活用による配信サービス、4K HEVC対応による映像プロセスと配信、SD/HD/4K対応の効率性高いIP配信技術などなど、多くのブースで多種多彩な展示が行われていた。

 このようなメディア、技術状況に対応し測定器関係も4K制作、IP配信を支援する各種機器を出展していた。リーダー電子はフル4K/QFHD/マルチSDI対応の高機能波形モニターを、テクトロニクスはソフトウェアのアップグレードで4K環境に対応できる波形モニターや4K HEVC符号のQualtyをチェックするツールを、Video Clarrityは4K映像を客観的に画質評価する装置を、DigimetricsはMPEG2、H.264、JPEG2000に対応する非参照型ファイルベースの自動品質検査QCシステムなどを展示していた。

映像技術ジャーナリスト(Ph.D) 石田武久

高度で多彩なシステムを公開したグラスバレー

高度で多彩なシステムを公開したグラスバレー

Pablo Rio 4Kによるワークフローの実演(クオンテル)

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高度で先端的な符号化、配信技術を公開(NTTグループ)

高度で先端的な符号化、配信技術を公開(NTTグループ)

劣悪なIP環境での伝送品質を改善するソフトを公開(Zixi)

劣悪なIP環境での伝送品質を改善するソフトを公開(Zixi)

#interbee2019

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