私が見た"NAB SHOW 2013"における技術動向(その3、カメラ、映像モニター編)
2013.4.26 UP
放送制作、映画製作両用の新機種(池上通信機)
4Kハイスピードカメラ(Vision Research)
4K有機ELモニターでリオカーニバル(ソニー)
リファレンスモニターと3Dシアター(ドルビー)
テレビカメラは(その2)で紹介した4K/8Kなど高解像度化の一方で、HDTV/SDTV対応のカメラも健在で、さらに様々な用途に合わせて小型・コンパクト化し低価格モデルも増え、多様化、多極化している。
パナソニックは同社提唱の符号化シリーズのAVC-Ultraに対応するカメラレコーダを出展した。最新機種は2/3”3MOSを搭載し、記録メディアにmicroP2カード(P2をSDカード並みに小形化)を使い、1080p/1080i/720pのマルチフォーマット対応で、AVC Intra200の記録が可能と高画質の上、軽量で機動性も優れている。また35mmシネフィルム相当の4/3”センサーを搭載し、フィルムライクな映像表現ができるマイクロフォーサーズカメラの新機種、さらにスタジオ制作用標準カメラなどを展示していた。
ソニーは変化しつつあるHDTV制作、ビジネス環境にも柔軟に応えるべく、番組制作からスタジオ用まで使える新製品のXDCAM HDショルダーカムコーダを出していた。撮像素子に2/3” 3CMOSを採用し、新開発のノイズリダクションにより高感度、高SN比を実現した。MPEG HD422 50Mbpsを採用しSxSメモリーカードにMXFファイル形式で記録できる。またハンドヘルドモデルのNXCAMカムコーダは、低コストで4K制作に対応するべく大判CMOSを搭載した小型業務用廉価モデルで、外部レコーダと組み合わせ4K/2K RAWデータの記録も可能である。
キヤノンは前述のEOSシリーズの他に放送、教育、イベントなど幅広い分野での利用が見込まれる低価格のハンドヘルド型カメラも展示していた。1/2.84”CMOSを採用し、広角・高倍率の光学20倍のズームレンズ、手振れ補正機構付き、高感度と広ダイナミックレンジを実現し、暗いシーンでも低ノイズで深みのある映像表現が可能である。
池上通信機は、UnicamHD シリーズを中心に各種カメラを出展した。ARRIと共同開発の新機種はスーパー35mmCMOSとPLマウントを採用し、低ノイズと広いダイナミックレンジを両立させ、優れた階調性、立体感ある映像を実現し、放送用、映画製作両方に使える。また2/3”3CMOSを採用しスミアレスでダイナミックレンジが広くマルチフォーマット対応で低価格の機種、2/3”3CCD を採用しフルHDに特化した多機能標準モデル、月明かり程度で撮影できAVC、ATW機能を持つ超高感度小型カメラなどを展示していた。日立国際電気はHD、60p対応のハイエンド機種、HD/SD両用で低価格化したポータブル型に加え、新開発の2/3”CMOSを搭載し高感度で、垂直スメアもなく高画質、高い操作性で低価格化した新型のフルHDカメラを出展した。さらにNHKと共同開発の小型ポータブル8Kカメラも展示していた。
朋栄は、超高感度カメラ”FZ-B1”(フローベル)を初出品した。従来モデルのEM-CCDに替わる新開発のCMOSセンサーを採用し、月光の0.01lx以下でも撮影でき自動感度調整機能により従来の高感度カメラで難点だった昼間の撮影も可能となり、さらにCCDタイプの弱点のスメアも解決した。JVCケンウッドはハンドヘルドタイプの4KカメラとHDカメラを展示していた。前者は1/2”CMOSを採用、光学10倍ズーム搭載で、4K(QFHD)、60p/50p/24p映像をH.264、144MbpsでSDカードに記録する。後者のHDモデルは1/3”3CMOSを採用し、光学手振れ補正機能付き23倍ワイドズームレンズを搭載し、MPEG2 XDCAMとAVCHDの両方に対応している。
高速度カメラ分野で実績高いVision RESEARCHは、今回、4Kハイスピードカメラを初出展した。新開発のスーパー35mm、12bit CMOSを搭載し、フル4Kで1000fps、フルHDなら2000fpsの高速度撮影が可能である。32/64GBの内蔵メモリー、1/2TBの外部メモリーが使え、映画やCM、テレビ番組など広い分野で活用できる。この他に感度を改良した最上位機種"FLEX"や小型軽量ながらフルHDで10~1500fpsの撮影が可能な"Miro"などを展示していた。アクション撮影で有名なGoProは今回も大変ユニークな展示をしていた。主力の超小型カメラ"HD Hero"は小型軽量で、衝撃に強く防水性も高く、ヘルメットや手足、スノーボードや自動車車体などに装着し高速走行しながら、1080pの高画質でSDメモリーカードに記録する。それらを使って撮影した臨場感あふれる様々な映像を公開し大いに人気を集めていた。
映像の高精細度、高画質化が進み、画質をしっかり管理し表示する映像モニター、出来上がった作品を表示、上映する大型モニターやディスプレイはますます重要になっている。
有機EL開発の老舗と言って良いソニーは、今回、QFHD対応の56”とフル4Kの30”の有機ELモニターを公開した。リオカーニバルで撮影したカラフルで高精彩の迫力、リアル感ある映像を映し出し魅了していた。またHD仕様のマスターモニター用有機ELの25”、17”を出していたが、業界から要望が強かった視野角を大幅に広げカラーシフトを改善したそうだ。パナソニックは、フルHD対応の3チップDLPを使いブース壁面一杯に大画面を上映していたが、高輝度、高コントラスト比だった。他に4K LCDモニターも公開していた。キヤノンも広色域で忠実な色再現性、深い黒と高コントラストの30”フル4K LCDモニターを展示していた。
高い映像モニターの実績を持つ池上通信機は、視野角が広く高輝度で高コントラスト、さらに動画応答、色再現性に優れ、3G-SDIからVBSまで様々な信号に対応する32”、24”、17”、9”型のLCDモデルを展示していた。また今回は高コントラスト、高輝度、高色再現で視野角も広い16.5"および24.5"サイズの有機ELモニター、さらに31.5”サイズの4K (QFHD) LCDモニターも展示していた。アストロデザインは前述の4Kシステムをデモするのに、60”、56”、32”サイズの4K対応のLCDモニターや制作支援用の9”型4K映像モニターや4K対応波形モニターを展示していた。
ドルビーは今回もプロフェッショナル・リファレンスを謳った高品質のフルHD LCDモニターを展示した。画面サイズは42”、広視野角でバックライトのLED素子をフレーム単位で制御することで、全色域にわたり高いコントラストと深い黒レベルを実現し、既に世界的に使われているそうだ。また今回のNABでは数少ない3D出展物として56”位の眼鏡なし3Dディスプレイも公開していた。レンチキュラー式だがピクセル精度の変換/多視点レンダリングにより高品質の3D映像で、映画作品やアニメーションを上映し評判になっていた。民生用テレビ市場では世界的に圧倒的シェアを誇る韓国勢だが業務用モニター分野でも躍進目覚しく、TVロジックは豊富なラインナップの高品質映像モニターを展示していた。主なものとしては、56"型4K(QFHD)、10bitのLCDモニター、47"型3Dモニター、マルチフォーマット対応の各種サイズのLCD型モニターなどを並べていた。またフルHDのリファレンスンニターやソニー製カメラに装填した7.4"型有機ELビューファインダーも公開していた。
次号ではデジタル時代に相応しいファイル化、高解像度化が進んでいるコンテンツ制作系、進展目覚しい符号化技術について紹介してみたい。
映像技術ジャーナリスト(Ph.D.) 石田武久
放送制作、映画製作両用の新機種(池上通信機)
4Kハイスピードカメラ(Vision Research)
4K有機ELモニターでリオカーニバル(ソニー)
リファレンスモニターと3Dシアター(ドルビー)