【コラム】鍋 潤太郎の現地レポート 北米で「シン・ゴジラ」(Shin Godzilla) 490館で公開
2016.11.3 UP
映画館の前には、長い列が
角を曲がっても続く列
映画館の中のパネル
10月11〜18日までの1週間、北米のアート系シアター館を中心に「Shin Godzilla」が限定公開された。配給は、主に日本のアニメーション作品等の北米での配給を手掛けるFunimation Filmsが手掛けた。
公開最初の週末は、34館という小規模公開ながら、全米ボックス・オフィス売上げランキングで19位にランクイン。しかも、1館当たりの売り上げ平均は$13,481という好成績。ちなみに、同じ週末の第1位だった「The Accountant」の1館あたりの売り上げが$7,416だったことを鑑みると、第1位の作品の2倍近い観客数が入っていた事が伺える。
■サンタモニカのアート系シアターで視聴
北米での上映は、その後拡大され、全490館で上映されたという。筆者はロサンゼルス地区での公開最終日の10月22日(土)、サンタモニカにあるアート系シアター、Laemmle Theatersに、同僚2人と共に映画館に足を運んでみる事にした。この日は、午後4時から1回だけ上映されるという極めて限定的な公開で、チケットを事前にオンラインで確保し、いざ出陣!
ちなみに、このLaemmle Theatersは、最新のハリウッド映画の公開用ではなく、外国映画や、過去の名作などを上映するアート系シアターで、時折日本の作品も上映される。過去に、筆者はこの映画館で「Shall We Dance?」(周防正行監督/北米での配給はミラマックス)を鑑賞した経験もある。
話を「Shin Godzilla」に戻そう。当日の午後3時すぎ、筆者が映画館に到着してみると、既に長い列ができていた。1回だけの限定公開の為か、映画館の正面パネルには作品名が掲載されておらず、我々が列に並んでいると、「えーと、この列は、ガメラの列かい?」と聞いてくるアメリカ人オタクもいた。(ガメラじゃなくて、ゴジラなんだけどね^^)
上映時間の20分程前に、いよいよ入場が始まった。中に入ると、映画館の場内は8〜9割ほどの入りで、日本人よりもアメリカ人観客が大多数を占めていた。また、上映前の予告編では「君の名は」も流れていた。近々に北米でも限定公開されるらしい。
■アメリカ人もいろいろ楽しんでいた
....さて、映画が始まった。
アメリカ人の観客は、東宝のロゴマークから始まり、戦闘機や武器が登場する度に画面に出る大きなスーパーインポーズ、日本の街並み、コテコテのサントラなど、邦画独特の怪獣映画の雰囲気を心から楽しんでいる印象であった。
筆者の経験では、日米を問わず、映画というものは上映回が異なると、映画館の観客の反応は異なるものである。全く同じ映画なのに、回が変わると、ウケる箇所も微妙に異なるものだ。なので、「この作品に対するアメリカ人の反応」というものは一概には言えないのだが、少なくとも筆者が鑑賞したこの日の上映で、アメリカ人観客にウケていた箇所は、
・総理大臣が決断に苦渋するシーンや、日本政府の描写および風刺。
・石原さとみ演じるカヨコ・アン・パタースンが、「私は大統領を目指している」と発言した時。
・「アメリカという国は、いつも無茶を押し付ける」というセリフが出た時。
などなどであった。
映画が終わって、ロビーや男性トイレで観客が口にしていた感想も、
・日本のゴジラが観れて良かった。
・カッコ良かった。
・ビルの倒壊シーンが良く出来ていた。
というポジティブな意見ばかりであったのは、同業者として嬉しい限りであった。
さて、石原さとみ演じるカヨコ・アン・パタースンのキャラクターについて、日本のネットでは賛否両論で議論が盛り上がっているようだが、アメリカ在住の筆者には好意的に感じられた。「ああいう日系人、良くいるよなー」と思いながら観ていた。もちろん、石原さとみ自身は英語圏育ちではないので発音については限界があると思うが、少なくとも在米20年の筆者の英話より全然上手だった(笑)また、石原さとみが持つ、人を惹きつける力というか、華というか、キャラクターも、この作品の魅力の1部ではないかと思う。
今回、「Shin Godzilla」の北米での公開が限定的だったこともあり、筆者の周囲でも「タイミングを逃して、観れなかった」「気がついたら、上映が終わっていた」と残念がる声も聴かれ、この作品に興味を持つ客層は思いの外広い印象が感じられた。これは、大変喜ばしいことなのではないだろうか。
ということで、「Shin Godzilla」のロサンゼルスでの公開レポート、簡単ではあるが、現地の雰囲気などを少しでも感じとって頂ければ幸いである。
また日本の作品が公開された暁には、ぜひアート系シアターに足を運んでみたいと思う今日この頃である。(鍋 潤太郎)
映画館の前には、長い列が
角を曲がっても続く列
映画館の中のパネル