【INTER BEE CONNECTED 2016 ブース報告(2)】HAROiD、ニューフォリア、マル研 テレビの魅力を拡大する新たなしくみを披露
2017.3.27 UP
HARIiDの安藤社長。CHARINを使った視聴者の視聴履歴分析を紹介してくれた
「比較的視聴者との距離が近いローカル局にとってこそ、具体的に役立ててもらえる」(安藤氏)という
ニューフォリアのTimelyCastのデモ。放送局として品質の良いレポートをタイムリーにできる
マル研ブースの「よむテレビ/さわれるテレビ」のポスター
昨年11月の18日から20日まで開催されたInter BEE 2016のINTER BEE CONNECTEDの出展ブース紹介2回目は、テレビに新たなしくみを提供する3者、HAROiD、ニューフォリア、 マルチスクリーン型放送研究会(以下、マル研)だ。それぞれ、具体的な事例をもとに、テレビの魅力を増大させる工夫が来場者の関心をひいていた。
■HAROiD、CMを入口にしたOtoOtoO成功事例を紹介
HAROiD(ハロイド)はテレビ視聴を活用した最新の取組みを披露した。いずれもテレビ局にとって新たなマネタイズにつながる可能性あふれる試みで、業界の期待も集まっていた。
事例のひとつ目は同社がOtoOtoOと呼ぶシステム。テレビのOnAirをOnlineつまりスマートフォンでネットにつなぎ、最終的にはOfflineである店頭での実際の購入に至るプロセスだ。具体的には、テレビCM中での呼びかけに応じて視聴者がスマートフォンでクーポンを取得、それを店頭に持っていくことで商品が手に入るというもの。通常の手段でネットでクーポンを配ろうとしてもなかなか目標数に達成しないことが多いが、テレビのメディアパワーを活用することで、スポンサーにとって十分な数が集まったという。
■静岡第一テレビでの視聴履歴を活用したマーケティング実証実験を披露
もうひとつは、静岡第一テレビで行った視聴者の視聴履歴を活用する実証実験だ。HAROiDの番組参加システムCHARIN(チャリン)を使って、視聴者の視聴履歴を採集。DMP(Data Management Platform)によって視聴者の属性を分析し、その傾向に合わせてメール配信やリターゲティング広告などのデジタルマーケティングを使ってアプローチして、最終的には店頭に導く。テレビのマスマーケティングとデジタルマーケティングを統合した新しい手法が確立できそうだ。
説明してくれたHAROiD社長、安藤聖泰氏によれば、比較的視聴者との距離が近いローカル局にとってこそ、具体的に役立ててもらえると考えているという。テレビ局が顧客管理をするような仕組みで、うまく働けば企業のマーケティングに具体的に寄与するだろう。HAROiDは日テレの出資で生まれた会社だが、系列は関係なく貢献していきたいとのことだ。全国各地各局での活用が進むことを期待したい。
■三年続けて出展のニューフォリア、TimelyCastを展示
INTER BEE CONNECTEDに三年連続で出展したニューフォリア社。今回もTimelyCastの展示をブースで見せてくれた。同製品はスマートフォンの映像を高速に伝送することができるシステムで、放送局にとって取材の機動力を大きく高めてくれる。SKEED社の技術を生かすことで最大10倍の転送レートで伝送を実現し、スピーディに映像を現場からスタジオまで送り届けられるという。
今年の展示は、スマートフォン一台でライブ中継も可能になるTimelyCastProをメインに打ち出していた。ブースでは、自撮りしている女性の映像がモニターに映し出されていた。 これは、TimelyCastを通したネットワーク経由の映像だ。さほどの時間差もなくまさにライブで映像を送れることが伝わってきた。
■スマートフォン一台で現場からライブ中継が可能になる
これを活かすことで、中継車を稼働させなくても現場にいる記者が自分のスマートフォンでレポートする映像を、そのままライブで放送できるのだ。アプリをインストールしておけば、事件や事故の現場の近くに居合わせたスタッフが急行し、最新の映像を送り届けることも可能だろう。画質も、4G/LTE回線なら720 30fpsの映像を安定して送信できるという。時代に合ったシステムといえそうだ。
いま、ライブ配信が手軽にできる時代になってきており、各メディアはその対応をはじめている。FacebookやTwitterで誰でもライブ配信はできるが、放送局として品質の良いレポートをタイムリーにできる体制づくりに、TimelyCastは大いに役立ちそうだ。すでに採用しているメディアも多いようで、放送業界での普及に注目したい。
■マルチスクリーン型放送研究会、SyncCastの進化形をコンセプト展示
マルチスクリーン型放送研究会(以下、マル研)は、これまで押してきたSyncCastの進化形として「よむテレビ/さわれるテレビ」のコンセプトを展示した。放送の同時配信も見すえて、新しいテレビ視聴の形を彼らなりに示したものだった。
マルチスクリーン型放送研究会は、関西キー局を中心にローカル局が集まって、テレビ視聴のスタイルを研究し、それに合わせたビジネス開発に取り組んできた。参加局は62局に増え、広告関係や放送機器、システム事業者まで幅広い企業が加わっている。スマートフォンアプリSyncCastを開発し、番組を見ている人にアプリを通じて情報や広告を配信する実験に取り組んできた。またモアテレビの名称で、受信した放送番組を無線LANでスマートデバイスでも視聴できる仕組みも開発している。
■同時配信の時代も見すえる新しい視聴体験へ
今回は、この二つの仕組みを合わせた新しいテレビ視聴をデモンストレーションしていた。スマートデバイスの上部画面でテレビ番組を表示しながら、下部画面で放送局からの情報や広告を配信する仕組みで、「よむテレビ/さわれるテレビ」と名づけられたものだ。まさに、モアテレビとSyncCastの長所を組合せた形だ。
さらに、この方式ならいま何かと話題になっている放送の同時配信が実現した際には、家の外で直接番組を受信した状態で、テレビ局から情報を送り届けることもできる。広告の受け皿にもなるので、収入のプラスも期待できそうだ。
マル研は、関西のテレビ局が中心になりローカル局が参加する団体だが、その組成はradikoと似ている。そのradikoのほうは、スマホでの放送の楽しみ方として認知も増しており、エリアフリーとタイムフリーも実現させて放送の最先端事例となっている。マル研の取組みも同じように、テレビ放送の最先端を切り開くものとして注目されている。今回の展示の実現や、さらなる研究開発に期待したい。
【INTER BEE CONNECTED】放送と通信の融合の最新動向について、さまざまなテーマに沿って業界の最前線で活躍するキーパーソンを招いたセッションや、放送局などの最新の取り組みや各種の最新サービスを紹介する展示エリアからなる催し。2014年から毎年、Inter BEEの会期中、3日間にわたり開催し、大きな注目を浴びている。今年、2017年のInter BEE(11月15日〜17日、幕張メッセで開催)でも開催する。
HARIiDの安藤社長。CHARINを使った視聴者の視聴履歴分析を紹介してくれた
「比較的視聴者との距離が近いローカル局にとってこそ、具体的に役立ててもらえる」(安藤氏)という
ニューフォリアのTimelyCastのデモ。放送局として品質の良いレポートをタイムリーにできる
マル研ブースの「よむテレビ/さわれるテレビ」のポスター