【Inter BEE 2013】私が見た”Inter BEE 2013”動向(その2)テレビカメラ編
2013.12.2 UP
ハイエンド4Kカメラ”EOS-C500”(キヤノン)
AVC-Ultra対応のハイエンドカメラレコーダ”AJ-PX5000”(パナソニック)
4K高速度カメラ”FT-one”(朋栄)
初出品の6Kデジタルシネマカメラ”RED Dragon”(RED Digital Cinema)
(その1)では今大会の全体状況とイベント関係の概略を紹介した。(その2)では新たな放送メディアの展開にあわせ急速に進歩している多種多彩な4K/8Kカメラ、高感度・高速度カメラについて概要を紹介する。
ソニーはメディア転換の時代に添い"Beyond Deinition"を掲げ、高付加価値化4K、高機能化ライブ、効率化ファイルベースの3本柱に注力した多種多彩な出展をしていた。カメラ系としては主力の4Kカメラ”F55”をベースに各種機種を並べていた。スーパー35mmサイズ CMOS(有効画素890万)を搭載した4K/HD対応で4Kモードなら60P、HDなら240Pまでのハイフレームにも対応し、広色域で忠実な色再現性、運用性にも優れている。また大判4K CMOSを搭載したNXCAM カムコーダは、RAWレコーダに4K/2K、16bitで収録する小型カメラである。さらに裏面照射型1/2.3” CMOSを採用し高感度、広角30mm、光学20倍ズーム、手振れ補正、XAVCフォーマットの 4K/2K Intra422 10bit記録に対応のハンディ型4Kカムコーダも展示していた。4K対応のラインナップが豊富になり本格的映画製作からミドルレンジの映画やテレビ番組・CM制作、プロモーションビデオ用と高品質コンテンツ制作が一層盛んになると期待される。
レンズ系はもちろん動画撮影分野でも実績を上げているキヤノンは、急速に進展する4Kの潮流にあわせ、撮影から表示まで多彩な4K/HD制作機器を展示していた。カメラとしてはCinema EOS シリーズをメインに展示した。ハイエンドの”C500”はスーパー35mmCMOS(有効画素890万)単版を搭載し、3G-SDI 2系統を備え4K映像をRAWデータ(60p、10bit)で出力し、QFHD/4K、2K/フルHDに対応し4K1Kなら120fpsも可能である。感度がISO 80000へとアップし色域が広く色再現性も向上した。HD対応の”C300”はCFカードにMPEG2 Long G 422、50Mbpsで記録する。また”C100”はHD/SD対応で高圧縮のAVC HDフォーマットでSDメモリーカードに記録する。さらに35mmフルサイズCMOS搭載の一眼レフカメラムービー
”1D-C”は、4K映像をCFカードにMotion JPEGにより記録する。これらと別にコンパクトムービーカメラとして、1/3”CMOS 3板を採用、MPEG2 Long GでCFカードに記録する廉価モデルと、新開発の1/2.8”CMOSを搭載し光学20倍ズームと手振れ補正付き、高感度・低ノイズと高性能でイベントや報道用などでの利用が見込まれるハンドヘルド型カメラも展示していた。
パナソニックは4Kワールドを謳っていたが前2社に比べると4K関連展示は少なくHDがメインだった。AVC ULTRAに対応し2/3”3MOS(220万画素)を採用し記録メディアにmicroP2カードを搭載した新型カメラレコーダ”AJ-PX5000”と、従来設備とのインタフェースも備えつつネットワーク時代のワークフローにも対応するメモリーカードレコーダを並べていた。また国内初出品のAVC ULTRA対応のハンドヘルド型カメラレコーダはmicroP2カードスロット2基を内蔵し、低ビットのプロキシデータから放送画質のAVC-
Intra100、AVC-LongGまで多様なビットレートに適応し、オプションでワイヤレスLANにも対応するモデルである。4K関連では、NABやIBC、今年のシーテックにも出展され詳細な仕様は不明の4K VaricamとULTRA P2カード(256GB)がアクリルケースに入れられ参考出品されていた。
池上通信機は、次世代放送への取り組みのパネルで2Kから4Kそして8Kへとこれからの機器開発ロードマップ掲げていた。カメラ系の注目は映画業界老舗のARRIと共同開発した”HDK-97 ARRI”で、スーパー35mmCMOSを採用し、高感度、高SN比、広ダイナミックレンジ、優れた階調再現性を実現した。ARRIのPLマウントを採用し浅い被写界深度から生み出されるシネマテイストの映像表現が得られる。HD/SDマルチフォーマットに対応し、ファイバやトライアックス伝送系により映画製作だけでなくテレビスタジオやライブ中継用にも使うことができる。もうひとつの注目は超高感度小型カメラ”HDL-4500”で、センサーに2/3” 130万画素高速マルチサンプリング型CMOS 3板を採用し、星明り程度の0.001lx/F1.4以下の低照度でも鮮明なカラー撮影が可能である。AVC、ATW機能を備え夜間だけでなく日中までシームレスに使え、長時間にわたる無人運用の監視カメラや生態撮影用に適しており、案室内の低照度下での映像を従来機種と比べて公開していた。それとは別に低照度や逆光、霧やモヤがかかった映像でもノイズを抑えつつ見えやすくする画像処理技術も公開していた。
NECも3板CMOS、フルHDの超高感度カメラ”NCH 1200”を出展していた。従来モデルより高感度化と低ノイズを実現し、それに加え映像鮮明化とノイズ低減技術により霧やもやなどの悪天候下でもクリアに、環境や周囲条件に左右されずに鮮明な撮影ができるようになった。
ナックイメージクテノロジーは代理店をつとめるARRIの製品をメインに展示していた。映画製作、テレビドラマやCM制作で世界的に実績あるデジタルシネマカメラALEXAシリーズ”XT”および最新モデルの”AMIRA”を展示した。XTの基本性能を継承しつつワンマン操作に特化したニューモデルで、広いダイナミックレンジと優れた階調再現性、低ノイズと自然な色再現の美しい映像が撮影できる。プロレゾで最大200fpsの収録が可能で、迅速に撮影できる上、撮影現場でもカラーコレクションが可能で作業効率が向上する。またヘッド部と記録部が分離可能で悪条件下での撮影や小型軽量ヘッドを3Dリグやステディカムへ装填できる構造の”ALEXA M”も並べていた。
朋栄は2機種のカメラを出展していた。ひとつはフル4Kの高速度カメラ”FT-one”で、11ストップと広いダイナミックレンジ、12bitと階調再現性も良く、最大900fpsのフル4K映像がRAWデータで内蔵メモリーに9.4秒間記録でき、大容量のSSDにも転送でき同時にQFHDライブ出力も可能である。もう一機種は
2/3”フルHDのCMOSを採用した高感度カメラ”HBC-1200”で、従来機種はセンサーにEM-CCDを搭載していたがCMOS化したことでスメアもなくなり、またノイズ低減により従来困難だったうす暗がりでの撮影も可能になり、さらに内部フィルターの切替えにより近赤外撮影も可能になった。
アストロデザインは4K/8K関連製品を多数出展していたが、カメラ系では小型コンパクトなCube型8Kカメラを展示していた。2.5”型3300万画素CMOS単板を採用し、8K、60P対応でPLレンズマウント対応、駆動回路を内蔵し本体重量2.5Kgと軽く従来のSHVカメラに比べ大幅に機動性が高くなった。またキヤノンの4Kカメラ”C500”に有機ElタイプのフルHDカメラビューファインダーを装備し4Kライブ中継用現像処理プロセッサーも展示していた。
ノビテックはVision Researchの高速度カメラPhantomシリーズを出展した。国内初出品のフル4Kの“FLEX 4K”は新開発のスーパー35mm、12bit CMOSセンサーを採用し、ノイズが少なく12ストップの広いダイナミックレンジと高画質な上、フル4Kで1000fps、フルHDなら2000fpsの高速度撮影が可能である。また新モデルの"Miro"は小型軽量だがフルHDで10~1500fps撮影が可能で、12GBの内蔵メモリーにRAWデータで記録でき、従来モデルとあわせ様々な用途に使えそうだ。
デジタルシネマ分野で世界的に高い実績を上げているRED Digital Cinemaは、初出品の6K(約1900万画素)センサーを搭載したデジタルシネマカメラ”Dragon”実機を展示した。100fpsまでの高速撮影も可能で、16.5ストップと広ダイナミックレンジ、ノイズ低減策によりナイトシーンの撮影も楽になった。従来モデルの5K”Scarlet”と”Epic MX”も並んでいたが、ラインナップが豊富になりディレクターやカメラマンのクリエイティブ意欲を一層高めることになりそうだ。
映像技術ジャーナリスト(Ph.D.)石田武久
ハイエンド4Kカメラ”EOS-C500”(キヤノン)
AVC-Ultra対応のハイエンドカメラレコーダ”AJ-PX5000”(パナソニック)
4K高速度カメラ”FT-one”(朋栄)
初出品の6Kデジタルシネマカメラ”RED Dragon”(RED Digital Cinema)