【SPECIAL】Inter BEE 2017 出展募集説明会 開催報告(3)臨場感を越えた映像体験を模索するLive Viewing、Public Viewingについて講演
2017.3.8 UP
「INTER BEE IGNITIONでライブエンターテインメント市場の可能性を示したい」と語る江口氏
昨年のINTER BEE IGNITIONでも、ライブ配信による実験的な試みを実施した
Inter BEEの滞在時間の長さを示すグラフ
Inter BEE 2017はさらなる規模の拡大の来場者像を目指す
前回に続き、3月2日(木)に開催したInter BEE 2017の出展募集説明会 報告の3回目。放送・映像業界における3人の講演者による「つくる」、「おくる」、「うける」の3つの講演のうちの、3つ目「うける」についての各専門家として、デジタルメディアコンサルタントの江口靖二氏による講演を紹介する。また、講演後、再び登壇したInter BEE プロジェクトマネージャーの石崎芳典氏が、Inter BEEの特徴を紹介。滞在時間の長さや優れたホスピタリティ、コンファレンスの増加など来場者増加の施策などを説明した。
■江口氏「現在進行形のLive Viewing、Public Viewing」
3人目の講演者であるデジタルメディアコンサルタントの江口靖二氏は、「「ポストTV時代へ 新たな映像エンターテインメント市場の創造」と題し、「つうる」「おくる」「うける」の最後のエリアである「うける」の最新動向について講演した。
冒頭、江口氏は「ポストTVに深い意味はなく、けんかを売るというより、むしろ逆。
いわゆる従来のInter BEEが中心としてきたTVと言われているものが、この50年と同じことがこの先50年も同じでないことはみなさんもご存じのはず。そういう中でさまざまな取り組みをいろいろな会社が世界中で努力している。こんなことも確かにあるかもね。ということを持って帰ってもらいたい」と述べた。
江口氏は、まず「つくる」、「おくる」、「うける」、という分類について「コンテンツの分野は、いろいろな業界、職種にまたがりすぎていて、プレイヤー、当事者があまりに多くて整理ができない。『つくる』、『おくる』、『うける』はわかりやすい。Inter BEEの今後を考える上でとてもいい整理」と評価した。
江口氏自身、この30年間にわたり、Inter BEEとさまざまな関係で関わってきたと述べ、「最初は来場者、その後、出展社としても参加し、今では企画に携わっている」と、INTER BEE CONNECTEDやINTER BEE IGNITIONの企画立案等に関わっていることを紹介した。
そうした中で「基本はINTER BEE IGNITIONの話をする」とし、「まさに現在進行形の話題を扱うのがINTER BEE IGNITION。従来のInter BEEのイメージや参加、出展する人が首をかしげたりする可能性もある。(例として)Live Viewing、Public Viewingがわかりやすい」と述べ、Live Viewingを「スポーツなどの大きなイベントをテンポラリーな会場で無料で視聴する」ものとし、Public Viewingを「芝居や音楽、バレエなどを劇場や映画館などの常設施設で視聴する。有料が多い」ものと定義した。
■8Kがもたらす臨場感
江口氏は、「映像、放送の業界が気がつかなければいけないこと」として、「せいぜい150年前に録音、録画が始まったが、もともとはリアルタイムの実演だけだったことが、録音・録画で時空間を超えるようになった。4K・8K、360度、スマートフォン、5Gにより、大きな変化がもたらされる」と指摘。さらに「録音・録画、固定することからライブへの回帰があるのでは」と予見した。
また、講演時に自ら小型のライブ配信用4Kカメラを設置して、SNSで講演の状況をライブ配信し、「数年前までテレビ局しかできなかったことが簡単にできてしまう。そういう傾向があちらこちらで出ている」と述べ、昨年、INTER BEE IGNITIONでも、ライブ配信による実験的な試みをしたことを披露した。
INTER BEE IGNITIONでは、8Kカメラを固定配置してダンスショーをリアルタイムに撮影・配信。ほぼ等身大の姿で上映し、スクリーン前で他のメンバーがいっしょに踊ることで、より臨場感のあるパフォーマンスを体験できるという試みだった。「カット割りやカメラワークがいらないというわけではないが、こういうケースの場合、あたかも自分がダンスショーの会場にいるような状態を再現するということなら、よけいな小細工はいらない」(江口氏)
江口氏は、他の事例も紹介し、「同じシチュエーションを別の角度で録ってスイッチングすると、映像がリアルなだけに、あたかも自分が移動したかのような違和感を感じる。そういう領域に入ってしまっているのが8K」だと説明した。
■現場より楽しくする工夫
また、超人スポーツや最新のネットワークゲームなどを紹介し、「こういうものは、関係ないことのように見えるが、放送と通信の融合のターゲットはこちらに向かっている」と、コンテンツビジネスのより広い領域に視野を拡げる必要性を訴えた。
またライブのポイントとして「忘れてはいけないことは、ライブな体験を共有すること。課題は、実際にパフォーマンスが行われてる現場よりも楽しくする工夫をどうするか」とし、江口氏自身がそうした課題解決へ向けた取り組んでいることを紹介した。
最後に出展企業への提案として、展示する機材とライブパフォーマンスを掛け合わせた企画の可能性を示唆し、次のように述べて講演を締めくくった「展示機器にコンテンツの魂を入れたい。せっかくあれだけの会社があそこに集結したのだから、個々の会社がやるのは大変だが、主催側でとりまとめる雰囲気をつくっていき、それにより、ライブエンターテインメント市場の可能性を示したい」(江口氏)
■石崎氏「顧客接点の機会が多いInter BEE」
講演後、再び日本エレクトロニクスショー協会の石崎氏が登壇し「放送、メディア業界のさまざまな変化をInter BEEの中でもとりあげ、紹介していきたい」と述べた。この数年の施策としてコンファレンス数、コンファレンス登壇者数が増加傾向にあり、昨年は過去最大となったが、これに伴い、来場者数も過去最大になったことを紹介し、「さまざまな出展社にあらたに出展いただき、多くのユーザーに来てもらっている。展示に加え、カンファレンスでも情報を得たいというニーズが高くなってきている現れ」と分析した。
また、来場者の滞在時間についても触れ、来場者の42%が5時間以上滞在することを紹介し「顧客接点の機会が多いというのが、Inter BEEの特徴」と述べた。
■細やかなホスピタリティ・サービス
石崎氏はまた、「長い時間、快適に見てもらえるようなサービス」として、来場者のホスピタリティにも力を入れていることを紹介し
(1)入り口手前にクロークを用意。身軽に見学してもらえる。
(2)ホール内イベントを開催し、展示会に近いところでセッションを見てもらえる。
(3)ブース以外のミーティング用商談ルームも用意。ドリンクサービスも無料で提供。
(4)ホール内休憩所も会場内で計画的に配置している。電源つきテーブルやソファなどを用意。
(5)食事スペースや、ロケ弁を楽しめるロケ弁グランプリを用意。
(6)長時間回遊するための通路カーペットをすべての動線で実施。
など、さまざまな細やかなサービスを進めていることを挙げた。
■出展小間にも配置の工夫
また、ブースの通路面も、小間ごとに開放面をなるべくたくさん確保する工夫をしており3小間からは通路面はかならず2面開放。4−6小間だと3面開放、8-10小間だと4方向すべて開放という配置の工夫をしていることなどを紹介した。
また、スタートアップ企業向けの安価なスモールパッケージブースも用意しているほか、INTER BEE CREATIVE、CONNECTED、IGNITION、EXPERIENCEなどの、特別展示スペースの活用も提案。セグメント化した対象へのピンポイントでのアプローチが可能なため、本体ブースと別に利用する例も少なくないという。
このほか、出展社からのセミナー会場利用に対しては、カンファレンスプログラムとしてInter BEEで案内し、事前予約受付も事務局が担当することも紹介。
■Inter BEE Onlineの活用も提案
また、Inter BEE Onlineのニュースメディアでは、開催までの情報への期待を醸成していき、会期終了後にはInter BEEの報告書でもある「Inter BEE REVIEW」を発行し、次回の来場出展の紹介ツールとして提供していることを紹介した。
最後に今後のスケジュールとして、第一次出展申込締切が5月31日、7月20日に出展社の小間位置を決める抽選会を兼ねた説明会を開催することなどを紹介した。
編集:Inter BEE 2017 ニュースセンター
「INTER BEE IGNITIONでライブエンターテインメント市場の可能性を示したい」と語る江口氏
昨年のINTER BEE IGNITIONでも、ライブ配信による実験的な試みを実施した
Inter BEEの滞在時間の長さを示すグラフ
Inter BEE 2017はさらなる規模の拡大の来場者像を目指す