【NEWS】CEATEC報告 「医療用裸眼3D液晶モニター」や 「フルスペック8K液晶ディスプレイ」「MEMSディスプレイ」など、新たな表示装置が登場
2014.10.24 UP
中村社長と裸眼3Dディスプレイを展示したエフエーシステムエンジニアリングのブース
天野氏のノーベル賞受賞を称えるNEDOのブース
三菱電機はCRTからLEDまでの大型映像の歴史を展示した
グリーン・イノベーション部門 グランプリ を受賞したシャープの「MEMS-IGZO ディスプレイ搭載タブレット」
10月7日から11日まで開催された最先端IT・エレクトロニクス総合展「CEATEC JAPAN 2014」では現地時間の10月7日に2014年のノーベル物理学賞が発表され、青色発光ダイオード(LED)の基礎技術を開発した成果で赤崎勇名城大終身教授(85)と天野浩名古屋大教授(54)、中村修二米カリフォルニア大サンタバーバラ校教授(60)の3氏が授賞したことを受けて会期2日目の8日からは関連するブースではこのノーベル賞を祝福する展示も目立った。(上写真は総務大臣賞を受賞したシャープの「フルスペック8K液晶ディスプレイ」)
■医療用裸眼3Dモニター 従来の課題を解決 バックライトに青色LED使用
中でも最もにぎやかでメディアの注目を集めたのが中村修二教授の実兄の中村康則氏が社長を務めるエフエーシステムエンジニアリングのブースだった。同社は裸眼3D(立体視)対応の医療用液晶モニターを出展した。
中村社長は「医療分野の外科手術領域ではメガネ方式の3Dモニターが普及しているが、メガネ方式の3Dモニターはメガネをかけることの医師のストレスや手術室での細菌問題が指摘されている。そこで当社は裸眼方式(メガネなし)の3D裸眼表示装置の開発に着手した。3D裸眼表示装置は逆視、モアレ、ジャンピングポイント、クロストーク、表示の暗さ、視野角の狭さなど様々な課題が山積していたが、それらの課題を全て解決した新しい3D裸眼表示装置を当社は世界で初めて実現した。液晶モニターのバックライトには弟の修二が開発した青色LEDを使用している。最終的には精度の高い裸眼3Dテレビを作るのが夢」と話し展示品の秀逸さを強調していた。
■NEDO 天野教授のノーベル賞受賞を祝福
独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)のブースでは天野浩教授の受賞を祝福する表示板が掲げられた。NEDOでは、今回受賞の契機となった青色発光ダイオードの成果を活用し、LED照明等のプロジェクトを通じて実用化を支援してきたという。特に天野教授はNEDOのプロジェクトリーダーとして、LEDの基板となる窒化ガリウム(GaN)結晶について、均一性が高く、高品質な結晶成長技術の確立に尽力したことでその栄誉を称える表示を行ったという。
NEDO理事長の古川一夫氏は次のようなコメントを寄せた。
「赤崎、天野、中村3氏のノーベル物理学賞の受賞をお祝い申し上げます。現在では当たり前のように使われている青色LEDですが、世界の消費電力の大幅な削減に寄与するものであり、また高輝度なディスプレイやブルーレイディスクなどの開発を可能にするなど産業分野に与えた影響も計り知れないものです」
「現在この成果は、更なるLED照明の高輝度、高演色性を実現するGaN基板の開発や、さらに次世代のパワー半導体としての適用も見据えた高耐圧GaN基板の開発に繋がっています。また、NEDOが進めている革新的超高効率太陽電池の開発においても、天野教授が開発したGaN結晶成長技術が活かされています。三氏の受賞をお祝いするとともに、NEDOとしても引き続き、LED分野の技術開発や実用化に向けて貢献していきます」
■「勝利を呼ぶスクリーン」オーロラビジョン
青色LEDの黎明期に実用化という観点から最もその市場発展に寄与したのが屋外の大型映像ディスプレイである。現在ではLEDが主体の大型映像システムであるが、青色LEDが市場に登場する以前は特殊なCRTや高輝度の放電管が大型映像の素子として利用されていた。世界ではじめて自発光方式の大型映像を開発したのが三菱電機である。
三菱電機は1980年に開発され、同社の顔ともなっている自発光方式のフルカラー大型映像システム「オーロラビジョン」の歴史を「CEATEC JAPAN2014」で展示した。
第1号機は1980年に米ロサンゼルスのドジャースタジアムに導入されたもので大型映像を使って選手や観客を盛り上げる華やかな演出を行ったこともこともあり、翌シーズンにはワールドシリーズ優勝に大きく貢献した。
その結果「オーロラビジョン(海外ブランド名:ダイヤモンドビジョン)」は「勝利を呼ぶスクリーン」としても人気を集めた。国内では1981年に後楽園球場(東京ドームの前身)に第1号のシステムが導入されている。
その当時のオーロラビジョンは単色のCRT管で作られており、単色管RGB3本でフルカラー映像を実現する仕組みだった。単色管から発展してRGGBのユニットの組み合わせにしたものが次世代の大型映像用のCRT素子である。G(緑)の色は明るさが他の色に比べて低いためにGだけ2つ使ってユニット化した。このタイプのオーロラビジョンはLED素子が発展する2000年代初期まで長く使われ多くの競馬場や野球場などのスタジアムや街頭大型ビジョンなどで利用された。
中村修二氏(当時・日亜化学工業)が開発した青色LED素子が93年に登場し21世紀に入ってからは自発光方式の大型映像の主役はCRTや放電管からLEDに交代した。大型映像用の素子を通してCRTから最新のLEDまで自発光方式大型映像の歴史をみせるというタイムリーな展示だった。
■シャープ NHKと共同開発の「フルスペック8K液晶ディスプレイ」120Hzを実現
シャープが参考展示した「フルスペック8K液晶ディスプレイ」(=上写真)は、会期初日の7日に発表された「CEATEC AWARD 2014 総務大臣賞」を受賞した。「総務大臣賞」は、高度でかつ新規性に富んだICT技術やネットワーク技術により、今後の豊かな生活や社会づくり、経済活動の活性化などに貢献することが期待される、最もイノベーション力を発揮した技術、製品、サービスなどに贈られる最高位の賞として位置付けられている。
今回受賞した液晶ディスプレイは、世界で初めてフルスペックの8Kスーパーハイビジョン(SHV)に準拠している。SHVは1995年からNHKが研究開発をスタートし、2018年までに実用放送が始まる予定。画素数が現在のHD放送の16倍になることから、極めて高画質な映像表現が可能になるとして期待されている。
シャープのデジタル情報家電事業本部液晶デジタルシステム第1事業部第1商品企画部主事の内田英之氏は、同製品の開発経緯について、次のように話した。
「当社は2011年5月にNHKと共同で、世界初のSHV対応直視型85V型液晶ディスプレイを開発し、その年の技研公開で初披露した。以来、NHKが保有する8SHVに関する知見やノウハウを提供してもらうことで、8K放送に相応しい液晶ディスプレイの開発に取り組んできた。今回展示したディスプレイは第3世代目にあたり、120Hzのスピードを実現したほか、画質面などでも大幅に改善を図った。2018年までの実用放送開始に向けて実用化を図っていきたい」
■IGZO技術と融合しMEMSディスプレイの実用化にメド 民生用途も視野に
シャープはグリーン・イノベーション部門 グランプリ も「MEMS-IGZO ディスプレイ搭載タブレット」で受賞した。同機は、米国クアルコム社の子会社であるPixtronix社とシャープの共同開発により実用化した最先端のMEMS-IGZOディスプレイを搭載。Pixtronix社のMEMSディスプレイ技術とシャープのIGZO技術の融合により、一般的な液晶ディスプレイに比べ低消費電力化と高い色再現性を実現している。
MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)ディスプレイとは、名前の通り、機械構造と電子回路が集積化されたMEMSと呼ぶデバイスを用いて、映像表示を行うもの。DLPプロジェクターの表示デバイスであるDMD(Digital Micromirror Device)素子も、MEMSの一つ。
MEMSディスプレイは、MEMS上のシャッターとLEDを高速で動かして色を表示するもので、省電力や色再現性、視野角、高速応答で優れるという。
カラーフィルターや偏光板が必要ないため、効率が良く、消費電力も少ない。
シャープの情報通信営業本部新規事業推進部副参事の中山俊宏氏は「当社は業界で初めてMEMS-IGZOディスプレイを搭載した7.0型タブレット端末を開発、法人向け市場を中心にシャープのブランドで2015年上半期に発売する予定。MEMSディスプレイは次世代ディスプレイとして長く期待を集めていたが、当社のIGZO技術と融合することで実用化にめどがついた。外でも良く見えるディスプレイとして外光の入る場所などで画面を見ることが多い現場をかかえる企業ユーザーをターゲットに商品開発を進める。将来的には民生用途も視野に入れてさらなる開発を行いたい」と話していた。
(川田宏之)
中村社長と裸眼3Dディスプレイを展示したエフエーシステムエンジニアリングのブース
天野氏のノーベル賞受賞を称えるNEDOのブース
三菱電機はCRTからLEDまでの大型映像の歴史を展示した
グリーン・イノベーション部門 グランプリ を受賞したシャープの「MEMS-IGZO ディスプレイ搭載タブレット」