【コラム】International CES 2013報告(1)4Kの最初の用途は1画面複数映像表示にあり!?

2013.2.15 UP

ソニーは、 4Kマスタリングを行ったBDコンテンツで4K対応をアピールした
LG電子の100型レーザープロジェクションテレビ

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ロケーションフリー装置「スリングボックス」はHDMI対応に進化した

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ディッシュネットワークはスリング内蔵DVRでどこでも視聴を実現した

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メディアをまたいでコンテンツを楽しむ新方式「ウルトラバイオレット」

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 インターナショナルCES(主催=米CEA:以下、CES)を「コンシューマ・エレクトロニクス・ショウ」と書いてはいけないそうだ。主催者が明確にそう述べている。CESは、電気製品ばかりか自動車分野に拡大しているし、サービス分野も扱っている。テレビ、レコーダといったハードウェア中心の家電からは大きく領域を広げている。取り扱い範囲を拡大するCESに見る気になる新製品・新技術を紹介する。
(日本大学生産工学部講師/映像新聞 論説委員 杉沼浩司)

■家電の縛りはない
 「夏季・冬季CES」というイベントがあった頃、確かに「CES」は「コンシューマ・エレクトロニクス・ショウ」であった。その名の通り、家電展示会である。デジタル家電の出現とそれらを結ぶサービスが目立つようになっても、イベントの名称にはCESが使われている。しかし、現在これに「コンシューマ・エレクトロニクス・ショウ」と注釈を振ることを主催者は拒んでおり、報道関係者向けの注意にも「”コンシューマ・エレクトロニクス・ショウ”と書かないで下さい」と明確に述べられている。しかし、まだメディアに浸透していないのか日米の日刊紙などでは旧称が引き出されることも多い。加えて、日本の日刊紙では和製英語たる「セス」が記されたものまである。現地で「セス」なる語を聴かないのは明白であることから、本当に現地取材をした記事であるかを疑いたくなる。
 CESの目玉は、毎年異なっている。コンテンツ配信サービスが話題だった年もあれば、電子書籍が話題だった年もある。今年は何であったかと問われれば「4K」と答えたい。ただし、4Kを活かしたサービス・コンテンツは現れておらず、その実力の片鱗を見せたのみの段階だ。

■もうHDに戻れない
 「もうHDに戻れない!」こんな声が聞こえた。4Kの映像を見ていた若い女性記者の声だった。今年は、日韓、そして中国のメーカーからいくつもの4Kテレビが展示されていたのは既報の通りである。まだ4Kを活かしたサービスや見せ方は固まっていないが、その画質がHD(注:本稿では、1920×1080画素を示す)を凌駕していることは明らかだった。
 テレビの画素数設計では、一定距離にいる視力1.0の人が画素を見分けられるかで決めてゆくと言う。しかし、この距離が短くなるか、画面が大きくなれば、当然のことながら画素を見分けられる。HDTVは3H(スクリーン高の3倍の距離)を最適視聴位置としているが、その距離で見ている家はどれだけあろうか。実際の視聴距離が3H以下ならば、HD以上の画素数も十分に活きてくる。
 米クアルコム社のスポーツ番組(NASCAR)中継デモ(既報)にあるように、一画面中に複数の動画を表示する場合、HDでも足りなくなる。このような画面の使い方に4Kが適する可能性は大きい。HDでの放送を中心に周囲に付加情報を置き4K画面を使い切ることは、おおいにあるだろう。
 一方、超高画質(少なくともピクセル数において)の4Kももちろん存在する。ただし、この点は今回のCESでの訴求は十分ではなかった。日本メーカーは、映像の素材や撮影方法に十分に気を配っていた。メリハリのある画像、引き込まれるような透明感のある画像で4Kが醸す臨場感をよく見せていた。外国メーカーは、かなりその点で手を抜いているように見えた。また、これらの4K機の画面上にはうっすらとベールのように細かなノイズも乗っていた。画質の印象を悪化させる要因を除き切ることができていないようだ。
 まともな4K機で素晴らしいデモ映像を見てしまうとHDに戻れない。この期待にどう応えるか。メーカーばかりでなく、コンテンツやサービスを提供する業界にも突きつけられた問題である。

■安全性に疑問の多いLG電子の”レーザーTV”
 「世界最高のレーザーTV」と称して、フロントプロジェクション型のレーザーTVを出展したのは韓国のLG電子である。100型表示に必要な距離は22インチ(約56cm)である。コントラスト比は1000万:1と非常に高い。画面を見る限り、スペックル(レーザー特有の干渉によるざらつき)も目立たず、きれいな絵を見せている。ここまでスペックルを低減させるために使われた処理については言及されていない。
 問題は、このプロジェクターがレーザー光を空間に放っていることにある。レーザープロジェクションは、安全に使えば視覚に問題を生じさせることがないのは多くの専門家が主張する通りである。しかし、米国に限らず各国ではレーザー光を放射する際の厳密な規定がある。NABやIBC(オランダ)にてレーザー光源のプロジェクタのデモが行われる際は、地元当局からの認可取得の上になされている。LG電子のこの製品が一般用であるとすると、法規制の問題とどう折り合いをつけたのかが謎となる。
 三菱電機はリヤプロジェクション方式のレーザーTVを生産していた。これは、空間にレーザー光を放たないため規制の枠外にある。画質の評価が高かったこの製品は、生産を終了したと同社のブースで告げられた。

■進化するTV転送
 CESでデビューし大ヒット商品となったTV転送装置「スリングボックス」(米スリングメディア社)は、HDMI接続機能を持った新型機が展示されていた。
 また、同社の親会社である衛星放送事業者エコスターからは、スリングボックス機能を内蔵したSTB兼DVR装置が複数出展されていた。エコスターは、子会社のディッシュネットワークを通じてスリング機能の搭載を精力的に進めており、記者会見でも新型STB「ホッパーwithスリング」の転送機能を強調していた。
 タブレット(デモではiPad)との連携は高いレベルで実現されており、画面に触れることで見たいプログラムを選択することができる。後付け型のスリング機では、タブレット画面上に現れるリモコン装置のボタンを押すことで操作しており、操作性が十分ではなかった。DVR一体型では、円滑な操作ができ、あたかもタブレットが大型のリモコンになったかのように感じる。

■ 買えばどこでも視聴が可能な「ウルトラバイオレット」
 パッケージメディアを購入していても、そのコンテンツのストリーミング視聴は別途有料、これまでは当たり前だった。これが大きく変わりそうだ。米国の大手映画スタジオ(一部)や小売り事業者、そして家電業界とストリーミング事業者が共同開発した「ウルトラバイオレット」が状況を変える。パッケージメディアに刻まれたシリアル番号を登録すれば、無料でストリーミング視聴ができる。ウルトラバイオレットを広めるためにブースが設けられていた。パッケージメディアの失地回復なるか。成果に期待したい。

LG電子の100型レーザープロジェクションテレビ

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#interbee2019

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