私が見たInter BEE 2012(その2)テレビカメラの技術動向

2012.11.26 UP

大評判の新登場の4KカメラEOS C500(キヤノン)
豊富になった4Kカメラシリーズ(ソニー)

豊富になった4Kカメラシリーズ(ソニー)

ALEXA Studio(ナック、ARRI)

ALEXA Studio(ナック、ARRI)

新登場の4K対応高速度カメラ FT-one(朋栄)

新登場の4K対応高速度カメラ FT-one(朋栄)

異質だが大評判のデジタルシネマカメラ(ブラックマジック)

異質だが大評判のデジタルシネマカメラ(ブラックマジック)

 前号では全体状況、併催行事の各種イベントについて概要を紹介した。本号では映像メディアの展開にあわせますます成長するテレビカメラの技術動向について見てみたい。高精細度4Kカメラの出展が目立った一方で、高速度・高感度カメラや小型・低価格モデルと多様化・多極化が進んでいる。

 キャノンは高画質番組・CM制作や映画製作を視野に入れ、EOS Cinema Systemシリーズを出展した。最上位モデルの“EOS C500”は、スーパー35mm相当の高感度CMOSセンサー(有効画素数885万)を搭載し、高画素数ながら高感度、Logガンマ採用により高精細度の広ダイナミックレンジの4K映像を撮影できる。3G-SDI 2系統を備えRAW(60p、10bit)で出力し、デジタルシネマDCI規格フル4K(4096×2160)およびテレビ系と親和性の良いQFHD(3840×2160)さらに2K(2048×1080)とフルHD(1920×1080)に対応する。ミドルクラスの“C300”は同じセンサーを搭載し、2枚のCFカードにMPEG2 Long Gop、50Mbpsで記録し、“C100”は圧縮効率の高いAVC HDフォーマットで2枚のSDメモリーカードに記録する。さらに35mmフルサイズの大型CMOS(有効約1610万画素)を搭載した一眼レフカメラタイプのムービーカメラ“EOS-1D”は4K映像をCFカードにMotion JPEGにより記録する。また昨年のInter BEEでデビューした小型でファイルベースのムービーカメラは、1/3"CMOS(総画素数237万)3板を採用し、MPEG2 LongGopでCFカードに記録し、比較的廉価だが映画やドラマ組制作にも使える高性能ビデオカメラである。

 “Believe Beyond HD”を掲げ4K制作を推進するソニーは、CineAltaカメラ“F65”を筆頭にニューモデルの“F55”、コンパクトモデルの“F5”を展示した。F65は8K CMOS(スーパー35mmサイズ、4096×2160の総画素数2000万)を搭載し、1~120fpsのハイフレームレートにも対応する。24pの映画製作、30p のCMやテレビ番組での高速度撮影が可能で、広い用途に使える高精細度カメラである。F55は新開発のスーパー35mm CMOS(総画素数1160万)を搭載し、4K~HD対応、忠実な色再現性、HDモードなら240Pまでのハイフレームにも対応するやや低価格なモデルである。F5はほぼ同程度の性能・機能性だが、より廉価なモデルである。また大判CMOS搭載した小型業務用NXCAMコーダは外部レコーダーと組み合わせ4K RAWデータの記録も可能である。このように4K対応のラインナップが豊富になり、本格的映画製作やCM制作、ミドルレンジ映画やテレビ番組制作、プロモーションビデオ用にと使い分けられ、高品質コンテンツ制作が一層盛んになることが期待される。

 パナソニックは“Evolving AVC World”を掲げ、新符号化AVC Ultraシリーズのさらなる進化を示す出展をしていた。P2HDシリーズのニューモデルは、新開発のCMOSを搭載しフルHD、10bit、4:2:2、AVC Intra100に対応する高感度、小型軽量だが廉価なショルダーカメラレコーダーである。プロ映像から放送業務用まで幅広いユーザーをターゲットにし、近々“micro P2”メモリーカード(従来のP2カードをSDカード並みに小形化)を装填し、AVC Ultraにアップグレードされるそうだ。その他には、高解像度、高感度のP2HDカメラレコーダー最上位機、4/3”MOSセンサー搭載のマイクロフォーサーズ対応フルHDカメラ、 AVCCAMシリーズでショルダータイプに迫る高画質フルHDのハンディカメラ、より小型軽量、低価格のハンドヘルド型など多様なカメラが出展されていた。

 池上通信機は、高画質で信頼性高いユニカム HDシリーズをメインに、従来から実績あるテープレスカメラGFCAM、小型情報カメラ、特殊用途の超高感度カメラや高速度カメラなど多種多様なカメラを展示していた。3G対応のフラッグシップ機は高性能プログレッシブCCDを搭載し、フルHD4:4:4、FPGA搭載の16bit映像処理により暗部の階調再現性が良く2倍速スローも可能である。特殊用途カメラとして月明かり程度の0.02lx位でもフルHD 動画像(60P)を撮影できる参考出品の超高感度カメラ、小型コンパクトながら低照度下でもAVC機能により高い色再現、高画質が得られるフルHDマルチパーパスカメラなどを展示していた。ナックイメージクテノロジーは池上と共同開発し一層画質を向上した超高速度カメラ“Hi-MotionⅡ”や、ARRI製のデジタルシネマカメラ“ALEXA”シリーズを出展していた。大判の4:3スーパー35mmセンサーを搭載し、カールツァイスのマスターアナモフィックレンズと組み合わせシネマスコープ映像の撮影も可能なフラッグシップモデル、ヘッド部と記録部が分離可能で悪条件下での撮影や小型軽量ヘッドを3Dリグやステディカムへ装填できるようにしたモデルを並べていた。

 JVC KENWOODは、小型のハンドヘルドタイプの4KカメラとHDカメラを出展した。前者は829万画素の背面照射型CMOSを採用し高感度、光学10倍ズームレンズ搭載で、4k(QFHD:3860×2160)、60p/50p/24p映像をSDカードに記録(H.264、144Mbpsで32GBのカード4枚に約2時間)できる。後者のHDモデルは1/3"CMOS3板を採用し、光学手振れ補正機能付き23倍ワイドズームレンズを搭載し、記録メディアはSDカードを使い、XDCAM EX、AVC HD両方のコーデックに対応する。高精細映像システムで高い実績を持つアストロデザインは、大判のマイクロフォーサーズ対応で小型コンパクトな4K(QFHD )カメラを出展した。ヘッドとプロセッサー間を光複合ケーブルで最大100mまで、シングルモードの光で300m延長可能な2タイプがある。

 朋栄は特徴ある特殊機能のカメラを出展していた。国内初出品の高速度カメラ“FT-one”はフル4Kで高感度CMOSセンサーを搭載し内臓メモリーを持ち最大900コマ/秒の高速撮影が可能である。また次世代超高感度カメラ“FZ-B1”(フローベル製)は、EM-CCDに替わる新開発のCMOSを採用し、自動感度調整機能により昼間の撮影も可能になりCCDの弱点のスメアも解決した。さらに最大700コマ/秒の高速度撮影可能なフルHDカメラ“Flash Eye”も展示していた。NECは、220万画素CCDを搭載した軽量型フルHDの高感度カメラを出展していたが、独自の映像鮮明化技術によりS/Nを改善し、感度アップ時のノイズを低減し、さらに空気層の霞によるぼやけを除去する機能も付加され映像品質が向上した。近赤外撮影モードを標準装備し、自動感度調整、自動追従ホワイトバランス機能を改善し、災害報道や中継番組での昼夜連続撮影にもフルオートで対応できるようになった。

 様々な映像システム・機器で世界的に急成長しているブラックマジックは、最近のNABやIBCでも話題を呼んでいるシネカメラを出展し来場者に自由に触らせていた。2.5Kイメージセンサーを搭載し、13ストップとダイナミックレンジが広く、内蔵SSDに非圧縮RAW/圧縮ファイルで記録する。EFマウントとマイクロフォーサーズ対応の2モデルがある。従来のテレビカメラと全く違うコンセプトの設計で、デジカメのように大判LCDでモニターし手持ちで撮影する廉価なカメラで様々な用途に使われそうだ。

 グラスバレーは従来モデルより画質、機能を向上した新型カメラLDXシリーズを出展した。自社開発のCMOSを採用し、1080i/p、720pのマルチフォーマットに対応する。従来のLDKシリーズより感度はF12、S/Nは60dBと向上し、低消費電力、小型軽量化され、機動性、操作性も向上した。世界的にデジタルシネマ分野で実績を上げているRED Digital Cinemaは、最新モデルの“EPIC"や”Scarlet”を並べREDワークフローの実演もやっていた。ノビテックは、VISION RESEARCHのハイスピードカメラ“Phantom”シリーズの中で、新型センサーを搭載し感度を向上したハイエンドモデルの“FLEX”や高速、高感度タイプの“V641”、また初登場で小型軽量モデルだがフルHDで10~1500(50倍速)fpsの撮影ができ、12GBの内蔵メモリーにRAWデータで記録できる“Miro”などの実演公開をしていた。   

映像技術ジャーナリスト(学術博士) 石田武久

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#interbee2019

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