【Inter BEE 2013】総務省 南俊行 大臣官房審議官 基調講演 W杯でHEVC 4K試験放送実現へ NexTV-Fへのローカル局参加も期待

2013.12.5 UP

 Inter BEE 2013(11月13-15日/千葉・幕張メッセ)では、4K関連製品が一気に拡大し、新たな放送サービスへの期待の高まりが感じられた。4K/8K放送は、総務省が新しいテレビ市場の開拓を目指してロードマップを策定。次世代放送推進フォーラム(NexTV-F)によって作業が進められている。会期初日、「次世代のコンテンツ-信頼と創造」を演題にした総務省の南俊行・大臣官房審議官による基調講演(上写真)の要旨を紹介する。

■ますます多様化する視聴者ニーズ 4K/8K実用化へコンテンツ制作支援も
 今後のテレビに対する視聴者のニーズは、高精細による画面の美しさ、スマートテレビ、ネットの動画配信--など、多様になってくるだろう。2Kのデジタルテレビと比較して4K/8Kの時代は、ユーザーのニーズに応えられる引き出しの多さ、さまざまな機能の組み合わせによって受信機市場は非常に魅力的になると思う。
 国内では、4K/8K放送実現の道筋を付けるための「NexTV-F」を立ち上げてもらった。地上波テレビ局、衛星放送、受信機メーカー、広告代理店、商社など、多様なプレーヤーに参加いただき、活動がスタートしたところだ。
 4K/8Kのコンテンツ制作は各社共通の悩みだと思うが、これをサポートするための4K/8Kのテストベッド環境も整える。WOWOWが『チキンレース』という4K制作のドラマを放送していたが、2Kによる視聴でもその質感の違いを感じた。
 4Kで撮っておけば2Kコンテンツとしても利点が大きいのではないか。4K/8Kで映像手法は革命的に進化すると実感している。4K/8Kは実用化の直前になって一気に制作するのではなく、作りだめをしておいた方がいいと思う。

■NexTV-Fによる情報共有、ローカル局の参加も期待
 ただこれまでのトライアルの中で、4Kカメラはピント合わせなど、従来からの放送用2Kカメラとは使い勝手が異なる面があるということが分かってきている。NexTV-Fではメンバー間でさまざま情報を共有しながら、カメラをはじめ、4K制作機器の精度を上げてもらい、プロの方々になじみやすい形への改善が進められている。
 NexTV-Fは民放キー局が中心メンバーとなっているが、今後は、ローカル局にも参加してもらう必要がある。先般の民放大会でローカル局の社長と話す機会があった。BSやCSで4K放送の視聴環境がつくられると、ローカル局は取り残されてしまうのではという危機感を持つ経営者が増えている。
 4Kは撮りだめしておけば、後々、利点が大きい。ローカル局も4K/8Kの撮影手法、関連技術習得を早めに始めた方がいいのではないか。その意味でもNexTV-Fではより多くの方々に参加してもらえるよう間口を広くしている。

■次世代の高機能テレビ、B2Bなど領域を拡大する4K/8K
 4K/8Kは、高画質、映像の美しさだけを追い求めていては成功しない。次世代スマートテレビと一体的に推進していくことが必須である。NexTV-Fには、4K/8Kと次世代スマートテレビの連携確保ための委員会も立ち上げている。
 医療や設計、美術館、監視カメラなど、BtoBへの展開も重要だ。そのための利活用委員会も新たに設けた。さまざまな領域で4K/8Kのトライ&エラーを実施する作業が始まりつつある。

■前倒しの実現へ向け資金面でも側面支援
 総務省も資金面で支援する。テレビ放送が始まったとき、またカラー化したときも、総務省は資金的支援をしていない。今回、テストベッド構築などで31億円の補正予算を獲得し4K/8Kの推進を支援するのは、世界に先駆けて新しい放送を実現してもらうために、前倒しをお願いしているからだ。かなり厳しいスケジュールで開発を進めてもらわなければならないので、総務省も側面から支援する。
 今回の31億円は、平成24年度補正は急きょ要求することを決めて、何とか確保できた予算。関係者には100億円欲しいとの声があった。総務省では今回だけでこの支援を終わらせるつもりはない。来年度も継続してこの分野で十数億円の予算要求をする。経済対策として、新しい予算も浮上してくる。ここでプラスアルファの予算が確保できないか、いま財政当局と相談を始めた。

■ブラジルW杯でHEVCのチップ化による4K試験放送実現を
 InterBEE 2013では、NECブースにHEVCのハードウエアによるリアルタイムエンコーダーの展示があった。これはまだチップ化されたものではないようだが、関連各メーカーが協力し、1日でも早くチップ化をしてもらいたい。
 14年のサッカーW杯ブラジル大会では、チップによるHEVCリアルタイムエンコーダー/デコーダーが間に合い、4Kの試験放送ができるよう尽力してもらいたい。
 テレビ局の4K/8Kコンテンツ制作への取り組みも徐々に拡大している。先日、NHKが制作した8K作品を見る機会があった。『コーラス』という作品は、全編ロングショットの演出で、能や観劇を見ているような感覚だった。これまでとは全く異なる映像手法が生まれてくる期待感を持たせるのに十分だった。

■国際標準化へ向け技術条件の策定作業
 一方で総務省では、4K/8K放送の実用化に必要な技術基準づくりに着手している。4K/8K放送はまず衛星でスタートし、その後CATVで実現する。符号化や多重化方式を含めて、これら放送を実現するための技術的条件の策定作業を進めている。
 ITUなどの国際標準化の動向を見ながら、決して日本の技術がガラパゴスにならないようにしたい。画素やフレーム周波数、色域といった具体的な規格の検討も進めている。14年3月には試験放送に必要な関連技術基準を公表したい。

■自治体・教育現場における4Kコンテンツ利用、医療での8Kカメラなど幅広い活用
 BtoBに関しては、放送設備はもとより、サイネージ、デジタルシネマ、さらには教育、設計・デザイン、医療、監視カメラなど、有望な市場は多い。8Kを医療用カメラとして使いたいという要望も出てきている。自治体からも4Kコンテンツを利用したいという意向がある。教育現場からは電子黒板で4K/8K活用のニーズが出てきた。
 4K/8Kの実用化には、次世代スマートテレビが重要だ。これはHTML5を搭載したテレビにおいて、放送からの制御信号をトリガーに、放送番組とスマートフォンやタブレットを連携するものだ。
 サードパーティーであるアプリケーション事業者に参入してもらうことで、コンテンツのすそ野が広がる。放送局が放送リソースをオープン化すればするほど、多彩なコンテンツが提供されるようになる。
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#interbee2019

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