Inter BEE 2021

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Special 2023.09.12 UP

【Inter BEE CURATION】SDGs広告に必要な視点と消費者の心をつかむ伝え方【Part1】 なぜSDGsの取り組みを広告することが重要なのか?

統括・ソリューションユニット ビジネスソリューショングループ/首都圏ユニット 第4グループ
 青島弘幸/松尾美希 VRダイジェスト+

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※INTER BEE CURATIONは様々なメディアとの提携により、Inter BEEボードメンバーが注目すべき記事をセレクトして転載するものです。本記事は、ビデオリサーチ社の協力により「VRダイジェストプラス」から転載しています。

【全体の趣旨】

・今後、持続可能な社会の実現に向かい、消費市場に影響のある社会規範の形成が見込まれる。
 よって、企業は積極的にSDGsの取り組みをアピールし、社会課題に関係づけることが重要になる。
・SDGs広告には社会課題と企業を関係づける社会的な誓約、啓発、提唱などの役割がある。
・SDGs広告の役割を明確に定めることは、表現力を規定し、企業への支持を高める要因となる。

低迷する日本のSDGs意識

松尾 今年も全国各地で大雨による災害が報告されています。気候変動の影響を感じますね。日本は2030年度までに温室効果ガスの排出量を半分(※13年度比)にするという高い目標を掲げていますが、気候変動への取り組みは進んでいるのでしょうか?

青島 環境省の発表では21年度で11億7000万トンでした。現在、17パーセント削減されているようですね。

松尾 2030年度に目標を達成できそうなペースなのでしょうか?

青島 環境省の資料をもとにグラフを描くとこんな感じです(図表1)。毎年、着実に削減できていますが、目標を達成するにはさらに努力する必要がありそうです。

【図表1】日本の温室効果ガス排出量の推移

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引用元:環境省 地球温暖化対策計画 資料17頁

松尾 脱炭素を中心に、政府による持続可能性に向けた政策がますます強化されていきそうですね。物価が高くなりそうで、私の生活的には厳しそう。(苦笑)

青島 松尾さんにも(私にも)相応の負担が求められてくるのでしょうね。(笑)

松尾 しかし、日本はSDGsに対して無関心な人が多い気がします。SDGsってテーマが広すぎて分かりにくい。それに、日本には「もったいない文化」があるので、他の国より実現できていると思っていそうです。

青島 (株)アスマークの調査で、日本・アメリカ・中国のSDGsに関する意識を比較したデータがあります。「SDGsの取り組みを推奨・実践している企業に対して、どのような印象を持つか」という質問に対して、日本はアメリカと中国より関心が低く、「何も思わない」という意見が3割と、突出しています。

【図表2】SDGsの取り組みを推奨・実践している企業に対する印象

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参考:(株)アスマーク 「日本・アメリカ・中国のSDGsに関する意識比較調査」

松尾 これは!?ヨーロッパはともかく、アメリカや中国と比較しても圧倒的に低いのですね。これでは、社内から「SDGsの取り組みをアピールしても無駄」「ネガティブな書き込みをされる可能性もあるから、広告なんてしない方が良いのでは」と言われてしまうかもしれませんね。

今後、SDGsへの低い意識は解消されていく

青島 この調査に限らず、日本人の意識の低さの指摘はよく見ますね。でも、今後も同じ状況が続くと思いますか?

松尾 地球温暖化の問題は、深刻な気候災害が多発すれば変わっていくような気がします。だって地球に住めなくなってしまいますから。私、青島さんより、これからずっと長く生きていかなきゃいけませんし。(笑)

青島 そうだね。(苦笑) 
コロナウイルスのパンデミックで体験したことを思い出せば、消費市場に大きな影響を与える社会規範が一気に形成される可能性は否定できません。ソーシャルディスタンスは今後解消されそうだけど、オンラインによる働き方、学び方は定着していきそうです。

松尾 コロナの場合は、政府分科会の尾身茂会長や科学者らの発言が大きな影響力を持ち、そこに政府やメディア、教育現場からの情報が加わったことで、社会規範を強化していった感じですね。

【図表3】コロナによって形成された社会規範と影響を与えた情報源

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青島 そう。気候変動の場合も似た構造があります。国連などの専門機関からの警告が、日本の政府や社会に影響を与えそうです。それに、少子高齢化の問題は日本経済に大きな影響を与えるので、政府は一層、力を入れていくでしょう。教育現場では既にSDGsを題材にした教材があらゆる科目で展開されています。

松尾 ホームルームや社会科目の中だけでなく、今はSDGsが身近に感じられるように教育を受けている子どもたちが増えていますね。私はZ世代なのですが、彼らの方がSDGsについてより理解しているようです。

青島 あと2年くらい経てば、Z世代と呼ばれる人たちで20代が埋め尽くされますね。そして、私のような人口の多い世代は、どんどん仕事から引退していきます。すると退職を契機に、のんびりとか、もったいないとか、ほどほど、みたいな価値観をベースに、持続可能性と関連した社会規範が形成されていくように思います。

【図表4】SDGsによる社会規範の変容

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松尾 先ほど述べたSDGs に対して無関心な人が多いという状況は、情報や教育の充実や、世代交代によって解消されていくということですね。

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社会課題と企業を「関係づける」広告クリエイティブが理想

青島 無関心層が多い今の状況でも、今後、積極的な企業によるSDGsの社会規範に合わせたサービス提案は増えていくと思います。例えば、Soup Stock Tokyoは赤ちゃん連れの客に離乳食を無償提供すると表明しました。

松尾 知っています。ネット上で少し炎上していた件ですよね。赤ちゃん連れが増え、ベビーカーによって通路が狭くなるのではないかという意見もありました。しかし、Soup Stock Tokyoはその声に負けず、「食のバリアフリーを推進することが企業理念である」という声明を公式ウェブサイトで発表しました。この毅然とした対応に賞賛を送りたいです。

青島 一方で、赤ちゃん連れを受け入れるには店舗のイメージと遠かった感じがします。一部でテストしていたようですが、多くの利用客には、突然の路線変更と受け取られたと思います。

松尾 難しいですね。今後、SDGsの社会規範に企業はどのように対応していけばよいでしょうか。

青島 まず、購入喚起を図るより社会課題と企業を関係づけることが重要だと思います。社会課題と企業を結びつけて、社会規範に調和したイメージを創造することができれば、消費者はその企業を選択することによって「自分は社会に貢献している」と自ら意味づけをしてくれます。

松尾 Soup Stock Tokyoは炎上してしまいましたが、「子育て支援に貢献する」というイメージはつきました。

青島 社会課題と企業を関係づけるには、「広告」を活用することが効果的だと思います。広告ですぐ売ることばかり求められますが、関係づけはすごく重要な広告効果です。

松尾 つまり、広告で多くの人に企業の取り組みを知ってもらって、社会規範の中で顕在性を高めていくことで、自然に消費者に対して販売促進することができるのですね。

青島 そのとおりです。でも単に目立つことだけを考えた広告は嫌われてしまいます。企業自身が社会貢献を実践していることは、言うまでもなく重要です。ホームページなどを通じて、詳細な情報を提供することが必要です。また、SNSやイベントを通じて消費者と対話することも求められます。これらの要素が欠けたまま広告を展開すると、逆効果になる可能性があります。

松尾 広告はどのようなクリエイティブが好ましいのでしょうか。

青島 社会規範の中で立てた企業の旗を、消費者が支えてくれるようなイメージでしょうか。つまり、消費者が社会規範に沿った企業の理念を支持し、応援したいという気持ちを喚起させてくれるようなクリエイティブが理想だと思います。

【図表5】SDGsで掲げた企業の旗を消費者が支持する図

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松尾 応援するって旗を振ることですものね。続き(パート2)でもう少し詳しい話を教えてください。

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