Special 2024.06.06 UP 【Hollywood Report】ティペット・スタジオが米連邦破産法11条の適用を申請、経営再建へ 鍋 潤太郎/ Inter BEEニュースセンター 第7回VESアワード(2009)にて、ジョルジュ・メリエス賞を受賞したフィル・ティペット(筆者撮影) ハリウッドの複数メディアが報じたところによれば、5月1日、ティペット・スタジオは米連邦破産法11条の適用を申請したという。 米連邦破産法11条は、会社更生形の倒産手続きで、かつてユナイテッド航空などの大手航空会社がこの適用を受け、経営の立て直しを図った経緯がある。 現時点では、これについてティペット・スタジオからの正式なアナウンスは未だ出ておらず、ティペット・スタジオの公式サイトも通常どおりに運用されている。 またFacebookのティペット・スタジオ公式アカウントでは、つい先ごろ開催されたカンヌ映画祭(5月14日~25日)においてストップモーション・アニメーションを駆使した新プロジェクト、映画「センチネル」の発表に関する投稿などが見られる。 米ヴァラエティ誌も、このカンヌ映画祭での発表を5月9日付の独占記事として報じており、ティペット・スタジオの倒産手続きについては、記事の中では一切言及されていない。 しかしながら、カリフォルニア北部破産裁判所の公式サイトでは、破産法11条に基づくティペット・スタジオの申請手続きの経緯が随時更新されており、現在経営再建が進んでいる様子が伺える。 これに関連するニュースとして、今年3月14日、ティペット・スタジオがインドのVFXスタジオPhantomFXに買収されたという報道がある。この報道によると、「今回の買収によってPhantomFXはティペット・スタジオの株式の80%を取得し、世界中のクライアントに最高レベルのポスト・プロダクション・サービスを提供していく」とあり、ティペット・スタジオの経営責任者であるゲイリー・マンデル氏の続投も報じられていた。 そこから、わずか2カ月後の破産法11条の申請である。詳細は現時点では不明であるが、債務清算が完了し、ティペット・スタジオのスタジオ運営が無事に存続される事を願うばかりである。 ティペット・スタジオ フィル・ティペットによって設立されたVFXスタジオ。創設者のフィル・ティペットは、ハリウッドのSFX/VFX、ストップモーション・アニメーションの分野で「レジェンド」と崇められる存在であり、特に『スター・ウォーズ』シリーズや『ジュラシック・パーク』での仕事ぶりが有名。1983年にILMから独立し、北カリフォルニアのバークレーにティペット・スタジオを設立。以降はストップモーションやクリーチャーに強いVFXスタジオとして、ハリウッド映画の視覚効果に大きく貢献してきた。カナダのトロントにもスタジオを持つ。近年ではILMとのコラボレーションも多く、複数の『スター・ウォーズ』関連作品に優れたストップモーション・アニメーションを提供し続けている。 新しい記事へ 記事一覧へ 前の記事へ