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Special 2024.06.05 UP

【Hollywood Report】映画『スター・ウォーズ』の公開記念日に アカデミー映画博物館にてダイクストラ・フレックスの実演イベントが開催される

鍋 潤太郎/ Inter BEEニュースセンター

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©Academy Museum Foundation

5月25日は、47年前に映画 『スター・ウォーズ/新たなる希望(エピソード4)』(1977)が封切られた日であった。その記念すべき日、ハリウッドのアカデミー映画博物館(Academy Museum of Motion Pictures)では、この作品で開発されたモーション・コントロールカメラ「ダイクストラ・フレックス」の実演デモが期間限定で開催された。

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ハリウッドのアカデミー映画博物館(Academy Museum of Motion Pictures)にて©Academy Museum Foundation

〇ダイクストラ・フレックスとは

監督のジョージ・ルーカスは、映画 『スター・ウォーズ/新たなる希望(エピソード4)』(以降、『新たなる希望』)の視覚効果撮影に必要とされる新技術を開発するため、1975 年に視覚効果専門のスタジオ、ILM(インダストリアル・ライト&マジック) を設立した。現在ILMは、世界中に現存するVFXスタジオの中で、最も古い歴史を誇っている。

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場内では、ジョン・ダイクストラのインタビュー映像も流れていた。手前はダイクストラ・フレックス。©Academy Museum Foundation

『新たなる希望』におけるチャレンジの1つは、観客の心をアクションの真っ只中に引きずり込む、宇宙船の大バトル・シーンを実現する事にあったという。これらのチェイス・シークエンスのフィルム合成に必要な、ミニチュア・モデルとカメラの動作を何回も正確に繰り返し再現する技術を実現する為に、ILM はモーション・コントロールカメラのシステムを開発した。このシステムは、開発のリーダーを務めた視覚効果の先駆者、ジョン ダイクストラにちなんで『ダイクストラ・フレックス』と名付けられた。

ダイクストラ・フレックスの開発は、当時の視覚効果撮影に革命をもたらし、その後の映画制作における視覚効果を新時代へと導いた。その結果、ダイクストラ・フレックス、そして関連する革新技術の開発により、『新たなる希望』は第50回アカデミー賞で視覚効果賞を受賞した。最初の『新たなる希望』で宇宙船のミニチュアを撮影するために開発されたこのカメラは、その後のオリジナル・トリロジー(旧3部作)や、ILM が80~90年代前半までの間に視覚効果を担当した多くの映画作品で使用された。

〇ダイクストラ・フレックスが実際に稼働する様子を実演

このイベントはアカデミー映画博物館の主催で、映画芸術科学アカデミーの科学技術評議会とのコラボレーションによって開催された。

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ダイクストラ・フレックスの可動部メカニズムに寄ってみた©Academy Museum Foundation

この日に実演が行われたダイクストラ・フレックスは、世界に1台しかない、「実物」。映画芸術科学アカデミーの科学技術評議会は、2008年、この”退役”したダイクストラ・フレックスをルーカスフィルムから譲り受け、動作可能な状態にまで復元。このシステムは何十年も稼働していなかったので、多くの部品を改修する必要があり、一部は完全に再構築する必要があったという。

実演デモでは、 『スター・ウォーズ/新たなる希望(エピソード4)』 でダイクストラ・フレックスを操作した、かの有名なリチャード・エドランドご本人、そして当時の開発者数名が、実際に操作をして当時の撮影の様子を紹介した。

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実際に稼働しているダイクストラ・フレックスの横で解説する、リチャード・エドランド©Academy Museum Foundation

〇ビスタビジョン・カメラを採用し、ステッピングモーターによってコントロール。
〇ミニチュアを1秒間に1コマで撮影する事で、モーション・ブラーを表現する事も可能だった。
〇当時、撮影は1日5ショットのペースで行われた。
〇撮影して白黒現像機で現像すると、10分後には白黒フィルムで確認出来た。それを見て必要に応じて動きを調整し、再撮影を行う。
〇全365のVFXショットを完成させた。
〇当時のICチップは、1基につき1キロバイトの記憶容量しかなかった。
〇撮影が1ショット終わる毎に、データをテープにSaveし、次のショットへと移った。

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ダイクストラ・フレックスの基盤を見せる、この日のイベントで司会進行を務めたジーン・コジッキ(アカデミー視覚効果部門会員)。「公開当時、私は10歳でした。今、この場に居られるのが不思議な気持ちです」©Academy Museum Foundation

また、リチャード・エドランドは、この作品が成功した理由について、こうつけ加えていた。

〇ジョージ・ルーカスのビジョン。
〇モーション・コントロールカメラの開発。
〇当時のILMの精鋭達。
〇作曲家ジョン・ウィリアムズによるサントラ。
〇20世紀フォックスの重役だったアラン・ラッド・ジュニアの存在。彼だけがジョージを理解してくれ、我々をサポートしてくれた。そのお陰で、映画が世に出る事になった。

「もちろん他にも成功要素は沢山あるが、主にこの5つが”成功のカギ”だったと考えている。このうち、どれか1つが欠けても、映画は成功しなかっただろう」(リチャード・エドランド)

最後の質疑応答では、司会進行を務めたジーン・コジッキ(アカデミー視覚効果部門会員)から、「制作中、このような実演デモを行う日が来るなんて、想像出来ましたか?」という質問が出た。これらに対し、

〇いいえ。私は当時、妻に『映画館で公開すらされないかもしれない、低予算のB級映画に関わっているんだ』と話していました。

〇10歳の子供が書いたような脚本で、『フォースを信じろ』とか書いてあって、すごく心配になったもんです(笑)

…などのユーモア溢れる爆笑エピソードも飛び出し、会場の笑いを誘っていたのが印象的であった。

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