【INTER BEE Curation】メタバース関連展示もさらに加速!「CES2023」で見た“次世代テレビ”まとめ
安蔵靖志 Screens
※INTER BEE CURATIONは様々なメディアとの提携により、InterBEEボードメンバーが注目すべき記事をセレクトして転載するものです。本記事は、Screensに2023年1月19日に掲載された「CES2023」に展示されたテレビモニターをまとめた記事となります。お読みください。
2022年1月5日から8日にかけて、米ネバダ州ラスベガスで世界最大級のエレクトロニクス関連見本市「CES 2023」が開催された。2021年開催の「CES 2021」は新型コロナウイルス禍で完全オンライン開催になったが、CES 2023は前年の「CES 2022」に引き続きオンラインとオフラインでの同時開催となった。
エレクトロニクス関連見本市というと、従来は大画面テレビやディスプレイが会場の華となっていた。しかし近年では自動車メーカーが多数出展し始めていることや、スマートフォン全盛時代になったことから、その様相も大きく変化しつつある。
もちろん、韓国のサムスン電子やLGエレクトロニクスといった大手テレビメーカーは、より高画質化した有機ELテレビや液晶テレビを多数展示しているが、「大画面テレビ=リビングの中心」ではない。スマートフォンの小さな画面から、パーソナルで楽しめるVR(仮想現実)ゴーグル、壁一面を埋め尽くす巨大スクリーンも含めて、テレビが「映像コンテンツを表示するアプリケーション」の一つになりつつあるような流れが感じられる。
■ワイヤレステレビから曲率を変えられるディスプレイまで幅広いLG
ここ数年、液晶テレビではLEDバックライトを微細化して細かく制御する「ミニLED」と、さらに細分化してピクセルごとにLEDを敷き詰める「マイクロLED」が高画質化(高コントラスト化)を実現する技術として注目されている。従来の蛍光体フィルターに比べて再現できる色域が広い「量子ドット」も高画質化(広色域化)を実現する技術として多くのメーカーが採用し、競い合っている状況だ。
テレビの高画質化はメーカーにとって重要な差異化要素であり、技術力向上にゴールはないものの、既に一般消費者にとっては十分に満足できるレベルに到達しているとも言える。そんな中で、大画面化や薄型化、高画質化だけではないテレビの新たな可能性を模索し、提案し続けているメーカーの一つが韓国のLGエレクトロニクスだろう。
同社はオブジェのようなテレビ「LG Objet TV」シリーズのほか、CES 2019で発表した巻き取り式ディスプレイを本体内に収納できる4Kテレビ「LG SIGNATURE OLED TV R」などを展開している。さらにCES 2023では「Zero Connect box」と呼ばれるチューナーボックスから4K/120Hz映像をワイヤレスで伝送する4Kテレビ「SIGNATURE OLED M(model M3)」を発表した。
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同社は4K/120Hz映像をワイヤレス伝送する4Kテレビは世界初としているが、日本では既にパナソニックが4K映像をワイヤレス伝送する「レイアウトフリーテレビ」や「ウォールフィットテレビ」といった4Kテレビを展開している。97インチという巨大ディスプレイを採用するのが「SIGNATURE OLED M(model M3)」の大きな特徴ではあるが、チューナー部を別体にすることでレイアウト自在にするという発想は共通している。
そのほか、20段階で画面の湾曲度合いを調整できる42インチ有機ELテレビ「LG OLED Flex」も発表した(2023年1月に国内でも発売予定)。リビング向けというよりは、どちらかというとゲーミングパソコンなどパーソナル用途向けという印象はあるものの、ボタン1つで平面から曲面まで変えられるのがユニークだ。
LGエレクトロニクスは以前からデジタルサイネージ向けの透明ディスプレイを展示していたが、CES 2023では個人向けの透明有機ELテレビ「OLED T」のプロトタイプを発表した。
そのほか、ジャパンディスプレイも透明ディスプレイ「Rælclear(レルクリア)」を展示した。こちらはバックライトなしで表示が可能な液晶ディスプレイで、透過率84%を誇るという。
シャープもCESS 2020でデジタルサイネージ向けの透明ディスプレイを展示(https://www.screens-lab.jp/article/23830)していたが、家庭向けにはどのように活用されるのか、今後の展開に注目したい。
■ソニーは27インチの裸眼立体視ディスプレイを展示
ソニーは裸眼で3D映像を視聴できる空間再現ディスプレイ「Spatial Reality Display」の27インチモデルのプロトタイプをCES 2023で初展示した。
これはディスプレイ上部に搭載する視線認識センサーによって左右の目の位置をリアルタイムで検出し、左右の目の位置に連動した映像をリアルタイムに生成・表示するというもの。2020年10月に発売した15.6インチモデル「ELF-SR1」に比べて、今回のモデルはかなり大型化している。
一般的な「3Dテレビ」とは一線を画すため、独自のコンテンツ作りが必要になるものの、ゲームエンジンで制作された3Dコンテンツなら簡単にSpatial Reality Display向けに変換できるとのことだ。販売時期や価格は未定だが、第一弾モデルは既に製品化されていることもあり、今後の市場投入に期待が持てる。
以前に国内でも発売された3Dメガネを装着するタイプの3Dテレビは、コンテンツ不足や3Dメガネを装着する面倒くささなどもあって普及しなかった。Spatial Reality Displayも家族で一緒に視聴できるスタイルのディスプレイではないものの、昭和の時代からさまざまなメーカーがさまざまな形でアプローチを試みていた「裸眼3Dテレビ」がいよいよ大画面で見られる時代になろうとしているのは感慨深いところだ。
■メタバース関連展示もさらに加速
一般消費者への浸透はまだ先、という感は否めないものの、最近注目度が日増しにアップしているのが「メタバース」(VR<仮想現実>などを含めた3次元の仮想空間やそれに対応するサービス)関連の機器やサービスだろう。
ソニーブースではソニー・インタラクティブエンタテインメントが2023年2月に発売を予定しているPlayStation 5向けVRヘッドセット「PlayStation VR2」を出展した。さらに、小型軽量のセンサーを装着してスマートフォンで撮影するだけでVR向けのモーションキャプチャー(人や物の動きをデータ化すること)できる「mocopi」の展示なども行った。受け手としてVRを楽しむ機器やサービスだけでなく、VR向け3Dコンテンツを制作できる環境も提供するところがソニーグループらしいところだ。
パナソニックブースでもCES 2022に引き続き、同社の子会社であるShiftallが開発したVR対応ヘッドセット「MeganeX」を展示。そのほか、本格的なモーションキャプチャーを行える「HaritoraX」シリーズやVR用コントローラー「FlipVR Controller」など、VRコンテンツ制作やVRビジネス利用に向けた機器を本格的にラインアップした。
シャープは以前から液晶テレビなどを出展してきたが、今回は初めて超高解像度ディスプレイや超高速AFカメラモジュール、超小型近接センサーを搭載したVRヘッドセットのプロトタイプを出展した。VRヘッドセット内に設置して目の動きをセンシングする高さ2mm以下の世界最薄超小型カメラモジュールや、ヘッドセット装着者の人や物への衝突抑制に役立つ小型ToF型距離センサーなど、VR向けビジネスにも本格的に名乗りを上げた形だ。
>超軽量VR用ヘッドマウントディスプレイのプロトタイプ
VRヘッドセットとは違うアプローチでテレイグジスタンス(遠隔存在感)を実現する技術として注目が集まったのが、Protoの「Proto Vision」だろう。高さ2mを超える本体に大画面ディスプレイを搭載し、カメラで撮影した人物やものの映像に加えてさまざまな情報を同時に表示し、タッチディスプレイによって情報を操作することもできるというものだ。既に大学の医学部や企業、博物館、スポーツ会場などで利用されているという。デスクトップ型というには大きすぎる感はあるものの、高さ約74cmの小型モデルも用意されており、よりリアルな遠隔コミュニケーションが実現できる機器として注目したい。