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2024.10.09 UP
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鍋 潤太郎 / Inter BEEニュースセンター
今年6月27日付の本欄で、「ストライキの余波に苦しむハリウッドのVFX業界」という記事を随筆させて頂いた。
現在、9月の後半にもなろうかという時期であるが、ハリウッドのVFX業界は依然として、昨年実施されたWGA(全米脚本家組合)、SAG-AFTRA(映画俳優組合)によるストライキの余波に苦しんでいる。
多少の回復は見られるものの、経験豊富でスキルが高い人材や、スーパーバイザー・クラスの人材ですら影響を受けている。Linkedinで繋がっている人材を見ると、プロフィール写真に#OPENTOWORKのロゴが表示されている方が多い。これらを鑑みると、ハリウッドのVFX業界ではこの秋もストライキの余波が根強く残っているという現状が伺える。
そこに今度は、SAG-AFTRAのゲーム業界に対するストライキが暗い影を落としている事は、既に日本でも報道されている通りである。
SAG-AFTRAによるゲーム業界のストライキは、2016年10月以来、8年ぶりである。
前回の「ビデオゲーム声優ストライキ」は2016年10月18日から翌年の9月23日まで、なんと11カ月/340日間にも及ぶ、長期に渡るものであった。
当時は、声優が収録を行う際にゲームの内容を知らされないケースがある等の「契約内容の透明性」や、人気ゲームの売り上げに対する2次報酬(Residual)などが争点であった。
今回のストライキでは、昨年実施されたストライキと同様、やはりAIを取り巻く保護対策が大きな争点となっている。
これは、SAG-AFTRAとの間で「インタラクティブメディア協定」に署名したすべてのゲーム会社が対象となるため、大手ゲーム会社の殆どが含まれる形となった。ただ、プロジェクトによっては、ストライキ対象外のゲーム作品もあるという。
SAG-AFTRAに所属する声優やモーション・キャプチャー俳優の間では、AIによる声優の声の再現や利用、モーション・キャプチャーのAIへの置き換え、正当な報酬無しにデジタル・レプリカを作成される可能性などについて大きな懸念が生じ、この保護協定について大手ゲーム会社側と1年半に渡る交渉を続けてきたものの、同意には至らずストライキに踏み切る形となった。
SAG-AFTRAは、ホームページ上で、「企業がAIを悪用し、組合員に損害を与えることを許可する契約には同意しない。」というコメントを発表している。
今回のストライキは2024年7月26日午前12時1分より始まり、そろそろ2か月目を迎えようとしている。ストライキ開始後、音声の収録やモーション・キャプチャーが必要なゲーム作品は、開発が中断されているケースも多い。
しかしながら、ゲーム会社の中には、個別にSAG-AFTRAと交渉を行い、AI保護協定に合意&署名したスタジオもあり、その結果9月5日時点で80タイトルのゲーム作品に対しては、組合員がストライキ中も仕事に復帰出来る機会を提供しているという。それ以外のゲーム会社に対しては、依然としてストライキが継続されている。
ゲーム業界では、2023年頃から大規模なレイオフやスタジオ閉鎖などが相次いでいた。その原因は様々であるが、大きな要因の1つに「コロナ渦の巣ごもり需要の終了」があった。この巣ごもり需要は、米ゲーム業界に予想外の急成長をもたらした。
多くの企業がこの成長継続を期待、追加投資やスタジオ買収などを進めたが、コロナ収束後は成長が伸び悩み、それがプロジェクトの中止、大規模なレイオフ、スタジオ閉鎖などに繋がったという。この中でAIは、ゲーム開発コストを軽減する解決策の1つとして検討されたが、これがSAG-AFTRAにとっては大きな懸念に発展する形となった。
ゲーム業界では、このストライキの影響による、雇用への更なる影響が心配されている。
備考:今回のゲーム業界に対するストライキの詳細は、SAG-AFTRAのホームページで見る事が出来る。