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Special 2023.05.15 UP

転換期を迎える老舗コンテンツ見本市~MIPTVカンヌ2023現地取材レポート

テレビ業界ジャーナリスト 長谷川朋子

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フランス・カンヌ春恒例の国際コンテンツ流通マーケット「MIPTV2023」が4月17日から19日まで3日間にわたって開催され、今年も現地を取材した。国際コンテンツ取引は堅調に推移し、共同制作へのニーズや国際FASTチャンネルビジネスの関心度が高まっていることから会場から熱気を感じる場面も多かった。一方、開催規模は縮小し、見本市そのものの価値が問われ始めてもいる。

アジアの中で日本が最も多く参加

地中海に面した南仏カンヌで毎年春の時期にMIPTVが開催されている。今年は60周年の節目を迎え、お祝いムードに包まれながら老舗の国際コンテンツ流通マーケットに86か国から5650人が参加した。そのうち、前年比で現地参加者は1000人増加した5510人、残りの120人はMIPTVオンラインプラットフォームを通じてマーケットに参加したことが主催のRXフランスから報告されている。

カンヌ現地に直接足を運んだ参加者が増加した要因はいくつかある。1つは渡航制限が緩和されたことによりアジアの参加者が増えたことが大きい。参加者の約7割は欧州からの参加者で占め、アジアの割合は全体の1割ほどだが、今年は中国本土からの参加が4年ぶりに復活した。

アジア主要国からどれだけの人数が参加したかというと、日本が最も多く120人強を記録。NHKと民放局などから計10社が出展参加した。ドラマからバラエティ、ドキュメンタリーまで強力な新作をプロモートし、引き続き注目度の高い韓国は100人強、渡航制限が緩和された中国はパビリオン出展も再開させて70人強が参加し、そして制作力を上げて勢いのあるインドは60人強となった。

増加要因の2つ目には、企画開発から資金集め、制作、流通に至るまで国際的に共同展開するコンテンツ取引が堅調であることをベースに、今年はドキュメンタリーにフォーカスしたプログラムが充実していたことが挙げられる。

グローバルプラットフォームでの展開を意識した連続ドキュメンタリー企画のニーズがとりわけ高まっており、MIPTVカンヌと併設された国際ドラマ祭「カンヌシリーズ」ではドキュメンタリーシリーズ部門が新設されていた。

RXフランスのエンターテインメント部門ディレクターで、MIPTV/MIPCOM カンヌのディレクターであるルーシー・スミス氏は「ドキュメンタリーコンテンツと共同制作は国際エンターテイメントコンテンツ業界の2つの大きな潮流にある」とコメントする。ビジネストレンドに合わせたマルチジャンルマーケットとしての強みが活かされたとも言える。


「FAST&グローバルサミット」初開催

3つ目はまさに最も注目を集めるビジネストレンドである国際FASTチャンネルをテーマにした集中プログラムを初開催したことにある。「FAST&グローバルサミット」と題し、約4時間にわたってマーケティングデータから見たFAST市場の将来性や課題、FASTチャンネルにおけるローカライゼーションの重要性と独占コンテンツの価値向上など、今FASTについて知るべき話題が取り上げられていった。

登壇者の顔ぶれはバリエーションがあり、偏りなく理解を深めることができた。パラウントグループのPluto TV、楽天ヨーロッパ、サムスンTV+ヨーロッパなどFASTチャンネル最前線のプレイヤーから、Variety インテリジェンス、Omdia、など大手リサーチ会社まで、その数総勢15人に上った。このグローバルサミットに加えて、別日にネットワーキングを目的としたラウンドテーブル朝食会も開催され、多くの参加者を集めた。

 一方、MIPTV全体の課題は、規模が縮小傾向にあることだ。国際コンテンツビジネスそのものが急速に変化し、ニーズが細分化されるなかで、今後もコロナ禍前の1万人規模の参加人数に戻るとは予想しづらい。スケジュール、参加人数、出展ブースのスペース共にスリム化が進んでいる、

だが、同時に可能性もある。MIPTVカンヌは新しいコンテンツマーケットのかたちを模索しているようにみえる。実際に参加者の誰もが自由にミーティングするためのスペース作りを強化する新方針を打ち出している。

RXフランスのルーシー・スミス氏は「会場のパレ・デ・フェスティバルにいることを楽しめるようなレイアウトを追求していきます。ミーティングのニーズが高まっているのは確かです」と話す。

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次回のMIPTVは2024年4月15日から17日まで、今年と同じく3日間開催を予定する。さらに秋恒例のMIPCOMは年内に予定し、プレマーケットのMIPJUNIORが2023年10月14日から15日まで、MIPCOMは16日から19日まで予定し、約1週間のMIPCOMカンヌウィークが展開される。期間中、昨年好評を得た国際共同展開スポット「プロデューサーズ ハブ&ラウンジ」を拡大して提供されるほか、10月版として「FAST&グローバルサミット」も企画される。

参加者人数は昨年の1万1000人を上回ることが予想されている。すでに出展ブース全体の80%以上が確約されているという。世界の主要なスタジオやプラットフォーム、コンテンツ企業がカンヌに勢揃いするようだ。世界最大級で老舗の国際コンテンツマーケットは今、転換期を迎えているが、時代に適応しながらコンテンツ業界全体の発展に貢献する有益なマーケットとして、その価値の追求は続く。

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