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Special 2023.06.08 UP

【Inter BEE CURATION】TVer×ローカル局~ローカル局における配信ビジネスの現状と今後~ TVer Biz Conference 2023レポート

編集部 Screens

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※Inter BEE CURATIONは様々なメディアとの提携により、InterBEEボードメンバーが注目すべき記事をセレクトして転載するものです。本記事は、Screensに2023年6月7日に掲載されたインタビュー記事を転載しています。是非お読みください。

株式会社TVer(以下、TVer社)のオンラインカンファレンスイベント『TVer Biz Conference 2023』が、2023年4月27日に開催。民放公式テレビ配信サービス「TVer(ティーバー)」(以下、TVer)のサービス概況をはじめ、TVerにおける新たなタイアップ広告事例やTVer広告の開発ロードマップの紹介、さらに広告主や放送局の担当者らを交えたトークセッションなどが行われた。
この中から本記事ではトークセッション「TVer×ローカル局~ローカル局における配信ビジネスの現状と今後~」の模様をレポート。
TVerを通じて配信されているローカル局制作番組の取り組みを紹介する。登壇者は株式会社テレビ宮崎 制作部の片之坂真哉氏と、熊本朝日放送株式会社 プロフィットセンター編成部長の和田有希氏。モデレーターを株式会社TVer 取締役の須賀久彌氏が務めた。

■東京以上にTVerが見られている?! データで明らかになった「ローカルの盛り上がり」

最初に須賀氏が、ローカル各地域におけるTVerでの番組配信、視聴の動向について解説。

現在650番組を超えるTVerのレギュラー番組中、在京・在阪局、BS局などを除くローカル局62局が92番組を配信している。2022年9月に実施した特別企画「TVerでととのう サウナ番組大特集! sponsored by ポカリスエット イオンウォーター」では、『サ道2021』(テレビ東京)、『サバンナ高橋の、サウナの神さま』(TOKYO MX)などのサウナをテーマとした番組や、『マツコの知らない世界』(TBS)や『蛙亭イワクラ使節団 ~伊藤と肥満とサイダーと~』(テレビ宮崎)などの番組がサウナを話題にした回など、新作・過去作合わせ200本以上のコンテンツを公開。ローカル局制作の番組も多数ラインアップに上がった。

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視聴の動向においても「ローカルの盛り上がり」が見て取れるという。

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「TVer全体の再生数においてコネクテッドTV経由での視聴割合が3割を超えるなど、存在感を増しつつありますが、全国的に見ると、東京に比べてローカルエリアのほうが格段にコネクテッドTV経由で視聴されていることがわかりました。1人あたりの平均視聴エピソード数においても、四国エリアで関東地方よりも13〜15%ほど高い水準を記録しています」(須賀氏)

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「おしなべて全国のみなさんにご覧いただいているTVerだが、なかでもローカルエリアの方々に積極的にご覧いただいている現状が明らかになってきた」と須賀氏。昨年1年間で新規に取引を開始した広告会社数も「全国的に200%ほどのペースで増えている」といい、「とくにローカルの広告会社の方々との取引が増えている」と語る。

■“宮崎アピールを兼ねて”TVerで配信、「サウナ特集」でアクセス倍増。テレビ宮崎『よかとこ発見!蛙亭イワクラ使節団〜伊藤と肥満とサイダーと』

続いて片之坂氏が、テレビ宮崎制作、TVerで配信中の番組『よかとこ発見!蛙亭イワクラ使節団〜伊藤と肥満とサイダーと(以下、イワクラ使節団)』について紹介。

【TVerで無料動画配信中】『蛙亭イワクラ使節団 ~伊藤と肥満とサイダーと~』

この番組は、宮崎県出身のイワクラ(蛙亭)が冠MCを務め、伊藤俊介(オズワルド)、大鶴肥満(ママタルト)、森本サイダーとともに県内のさまざまな場所をロケで巡るバラエティ。ルームシェア仲間であった出演者の4人が配信するYouTubeチャンネルの“地上波テレビ版”として企画され、同局の若手社員を中心とした部署横断チームが制作を手掛けている。

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株式会社テレビ宮崎 制作部の片之坂真哉氏

「宮崎のアピールも兼ね、全国のみなさんにもご覧いただきたい」という思いから、2022年4月番組スタート時よりTVerでも配信。「サウナ特集」ではイワクラの出身地・小林市のサウナを訪れた回が取り上げられた。

「何もしていないと再生回数は徐々に右肩下がりとなってしまいがちですが、このような施策があると、普段ご覧でない方にも番組を知っていただけるチャンスにつながります。事実、『サウナ特集』で配信した回は通常時の2倍以上にのぼる再生回数を記録しました」(片之坂氏)

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2022年7月には、番組メンバーであるイワクラと伊藤の熱愛が発覚。当時、2人が揃って出演する番組が『イワクラ使節団』だけであったことから、SNSなどで話題になり、アクセスが殺到した。翌月には2人が熱愛報道の裏側を語るエピソードを公開し、こちらも多くの再生回数を記録したという。

「番組内容の質を上げていくのは当然ではありつつ、先に上げた特集コンテンツや今回の熱愛報道のような話題もまた、番組視聴のフックとして大きな役割を果たしました。全国ネット番組のように広く番組宣伝が流れることのないローカル番組において、SNSは宣伝手段として非常に重要な要素だと痛感しています」(片之坂氏)

■TVer配信で県外ファン獲得、“聖地巡礼”で地元に還元。熊本朝日放送『ヒロシのひとりキャンプのすすめ』

続いて和田氏が、熊本朝日放送制作、同じくTVerで配信中の番組『ヒロシのひとりキャンプのすすめ』を紹介。

【TVerで無料動画配信中】『ヒロシのひとりキャンプのすすめ』

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熊本朝日放送株式会社 プロフィットセンター編成部長の和田有希氏

この番組は、キャンプブームの火付け役として知られる芸人・ヒロシが、自身の率いるソロキャンパー集団「焚火会(たきびかい)」の仲間たちと自由なキャンプを繰り広げるバラエティ。同局で放送していた深夜番組のワンコーナーとしてスタートし、2020年4月から単独の番組としてレギュラー放送を開始した。当初は月1回の放送だったが、人気を受け、2021年4月より隔週の放送、2022年4月からは毎週の放送となった。

「当初からヒロシさんの熱量が高く、『これは全国を狙える番組だ、熊本だけで流すのはもったいない』と言ってくださっていました。制作、編成メンバーともに『どうやったらそれを実現できるのか』と考え続けていたところ、TVerがローカル番組の配信に力を入れると聞き、番組が月1回から隔週の放送となったタイミングでTVerでの配信に打って出ました」(和田氏)

「TVerを通じて全国の方にアクセスいただけるようになったことで、熊本ローカル時代とはガラリと環境が変わった」と和田氏。TVerでの配信開始後、番組Twitterのフォロワー数やYouTubeチャンネルの動画再生回数も劇的に伸びたほか、「お気に入り」登録の数に比例してTwitterでの会話量やインプレッション、エンゲージメントにも上昇が見られたという。

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「TVer配信は、MCのヒロシさんはじめ、出演者やスタッフにとってリアルな手応え、モチベーションにつながっています。特に再生数や『お気に入り』登録の数は大きな励みになっていて、『今回は再生数どうだった?』『反応はどうだった?』といった会話が盛んに行われています」(和田氏)

『ヒロシのひとりキャンプのすすめ』はTVer配信をきっかけに熊本のみならず九州、全国各地へとファンを広げ、TVerの九州・沖縄エリアでの“お気に入り登録数1位”を獲得。2022年11月に東京で番組公式本の出版イベントを開催し、県外にも関わらず即満席の盛況だったという。

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「2023年3月に地元・熊本で開催したファンミーティングにも、県外から多くの方々にお越しいただきました。イベントとあわせて番組のロケ地となったキャンプ場やヒロシさんに関連する場所などを訪れる『聖地巡礼』を楽しまれる方も多く、SNSで盛り上がりを見せていました。県外に向けた発信によってその盛り上がりを熊本にふたたび還元でき、まさにローカル局としては念願のサイクルが出来上がっています」(和田氏)

■“地元で視聴”はプレミアム?! TVer配信で生まれるローカル番組の新たな指標と価値

後半は片之坂氏、和田氏が現状を振り返りながら、「TVerに望むこと」をコメント。和田氏は「ユーザーの方々がローカル番組にアクセスできる機会を増やしていただけるとありがたい」と要望する。

「TVerで配信される番組自体が非常に多くなり、その中から選んでいただくことの難しさを痛感しています。だからこそ特色ある番組作りに取り組んでいかなければというのはもちろんですが、魅力にあふれたローカル番組をもっと知っていただける特集や切り口を用意していただけると、とても嬉しく思います」(和田氏)

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一方、片之坂氏はTVer配信をきっかけとした「新たな指標」の誕生に期待を寄せる。

「TVerの再生数やSNSでの反響からは、視聴者のみなさんの“熱量”が伝わってきます。地上波の場合、どうしても視聴率に目が行きがちですが、これからのローカル番組にとって、こうした『熱量の注がれ具合、選ばれ具合』こそが重要な指標となっていくように思います。極端な話、『視聴率はよかったけれども、果たして“熱量”はあったのか?』と番組作りを振り返ることも多くなるのではないでしょうか」(片之坂氏)

和田氏は、番組のリアルタイム視聴の価値についても言及。現在、TVerのリアルタイム配信は在京キー局5系列のGP帯全国ネット番組に限られており、ローカル番組のリアルタイム配信までには至っていない。しかし、それによって逆に、本来の放送地域である熊本での地上波放送が「プレミアムコンテンツ」化していると語る。

「熊本ローカルの番組ゆえ、逆に地元・熊本に住んでいる人にとっては『自分たちはリアルタイムかつ最速で番組を見られる』という一種の“特典”になる。TVerでご覧いただくのはどうしても放送より後になりますが、そこは逆転の発想で、番組の放送地域に住んでいることが一種のプレミアムシートとして価値を持つかもしれません」(和田氏)

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株式会社TVer 取締役の須賀久彌氏

須賀氏は今回のセッションを振り返り、「TVerのコンテンツのローカルエリアでの活用は今後ますます増えてくる」と語り、「われわれもそのためにいろんなことを仕掛けていきたいと」とコメント、「広告主様、ユーザーのみなさま、そしてローカル局のみなさまそれぞれの立場において、今回のセッションで展開された視座をぜひご活用いただければと思います」と締めくくった。

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