Inter BEE 2024 幕張メッセ:11月13日(水)~15日(金)

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【Inter BEE CURATION】広告出稿状況から見えてくること|ACジャパンのテレビCMを例に分析

VR Digest編集部 VRダイジェスト+

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この記事はこんな方にオススメ!
✅競合・ライバル企業の出稿情報を収集している方
✅広告宣伝費や広告の出稿動向を調べたい方
✅テレビCMやデジタル広告業界に携わる方

1.はじめに

テレビでは日々様ざまな企業・商品・サービスのテレビCMが放送されており、それらは時期や時間帯によって放送回数やCMの内容が変化しています。
ある特定の企業・団体におけるテレビCMの出稿状況を分析してみるとどのようなことがわかるのでしょうか。

本記事では当社が保有するテレビCMの統計データベース「テレビ広告統計」を用いて、公益社団法人ACジャパン(以下ACジャパン)のテレビCM、クリエイティブ別の出稿状況を分析しました。

※補足
ACジャパンのテレビCMは、あらかじめ各放送局にCM素材となるクリエイティブを納品し、放送局の判断で適宜放送する仕組みが取られています。

2.10年前と比較すると出稿量は約3倍に増加

年間で出稿量を比較(2013年、2019年~2023年)

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【図1】は2019年~2023年の5年間と、10年前の2013年におけるACジャパンのテレビCM年間出稿量を比較したグラフです。

まず、2019年~2023年の年間出稿量(【図1】左)をみてみると、2020年に出稿量が急増していることがわかります。
この時期は記憶にも新しく、世界的に猛威を振るった新型コロナウイルスの影響で私たちの生活が一変した時期でした。

翌年2021年には出稿が激減し、コロナ前の2019年以下の出稿量となりました。
その後、右肩上がりで増加しているものの、いずれの年も2020年の出稿量には届いていません。
しかし10年前の2013年(【図1】右)と出稿量を比較すると、約3倍に増えていることがわかりました。

月別で出稿量を比較(2019年~2023年)
出稿量は年単位ではなく、さらに細かく月別で比較することも可能です。
ここでは2019年~2023年の出稿量推移を月別で見ていきます(【図2】)。

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【図2】のグラフを全体的にみると、グラフの形に共通点はなく、毎年、出稿している時期や量はバラバラであることがわかります。

なかでも出稿量が突出している"3つの山"が発生した時期、世の中はどんな動きをしていたのでしょうか。

2019年8月、2020年3~4月、2022年7月を振り返ってみます。

①2019年8月
九州北部地方を中心に記録的な大雨が降り"令和元年8月九州北部豪雨"が発生しました。
この大雨の影響で、河川の氾濫・土砂災害・人的被害や住家被害があったほか、 停電や断水等のライフラインへの被害や交通障害が生じました。

②2020年3~4月
この時期は【図2】のなかで最も出稿量が伸びており、前章でも述べたように新型コロナウイルスが猛威を振るいはじめた時期と重なります。その影響で、テーマパークや映画館など、レジャー施設の休業が相次ぎました。

本来であれば春の集客を狙って計画していたテレビCM出稿が一斉に取りやめとなったことで、ACジャパンの出稿量が増加したと推察できます。

③2022年7月
国民に大きな衝撃とショックを与えた"安倍元首相銃撃事件"が発生。
突然の出来事に日本中が混乱し、多くの企業・団体が早急にCM出稿を控えたため、ACジャパンのCM出稿量が増加したのではないでしょうか。

*当時の出稿動向は以下の記事で紹介しています。
詳しく知りたい方は以下をご覧ください。

重大事件発生時の「ACジャパン」CM出稿を検証~事件後のCM差替えは?

ACジャパンのテレビCMは、企業・団体が出稿をとりやめるに値する有事の際に放送される場合が多いため、民間企業の広告戦略とは考え方が異なる部分もあるかもしれませんが、その他の企業・団体の出稿量を時系列でみるうえでどのようなポイントがあるのか、以下にまとめました。

・年別で動向を追うことで、特定の企業・団体がテレビCMにどの程度力を入れているのかがわかり、傾向を探るヒントとなる情報が掴める
・月別で動向を追うことで、特定の時期に精力的に出稿しているか否か"動き"を読み、戦略を予測する材料になる

このように、出稿量からわかることは様ざまあるといえます。

3.ACジャパンのCMはどんなメッセージ性のあるクリエイティブが多いのか

次に、出稿されているテレビCMのクリエイティブ別に、2019年~2023年における出稿量の推移を見ていきます。

傾向を掴むため、ここではクリエイティブを7つのジャンルに分け、各年出稿量が多い順に記載しました【図3】。
※ジャンル分けはあくまで当社独自の判断で行っており、ACジャパンによる定義付けではありません。

クリエイティブ別 年間出稿量推移(2019年~2023年)

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出稿量が最も多いクリエイティブを見ると、2022年を境に傾向が変化していることがわかります。
2019年~2021年では「金銭的支援手段の紹介」を表すクリエイティブの出稿が目立っていたのに対し、2022年からは「病気・健康啓蒙」を表すクリエイティブの方が出稿が多いことがわかります。

次いで「動物愛護」のクリエイティブに注目してみると、2019年から2020年にかけて出稿量が約2.8倍に増えていることがわかります。

要因は様ざま考えられますが、2019年6月に"動物愛護法"が改正されたことや、翌年2020年のコロナ禍でペットを飼う人が増加した"ペットブーム"が到来したことなどが、「動物愛護」のクリエイティブが増加したことと関係しているのではないかと考えられます。

最後に「LGBTQ・男女平等」のクリエイティブの5年間の出稿量を確認すると、全く出稿されていない年もある中で、2023年に急激に出稿量が増えています。
こちらも同年6月に"LGBT理解増進法"が成立・施行されたことが起因していると考えられます。

クリエイティブ別 月別出稿量推移(2013年、2019年~2023年)
最後に【図4】は、2013年、2019年~2023年におけるクリエイティブ別の出稿量を月別で表した図です。

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【図4】すべてにおいて共通することとして、特定の時期に特定のクリエイティブを出稿するような、季節特有の傾向は見当たりませんでした。

ACジャパンのCMは、冒頭でも触れたように「放送局の判断で適宜放送」する仕組みにより、有事の際に出稿を取りやめた企業のCMを差し替える形で出稿されることが多く、
出稿するときはほぼすべてのクリエイティブの出稿量が増加し、出稿を控えるときはほぼすべてのクリエイティブで出稿量が減少しています。

今回テレビCMの出稿量を調査したACジャパンの出稿形態は少々特殊な例でしたが、
放映されているクリエイティブを把握することで、その年の戦略や伝えたいメッセージを推測することができ、競合企業のテレビCMの動向をさらに細かく掴むことにも役立つのではないでしょうか。

4.さいごに

今回の分析は、当社が日本全国のテレビCM出稿状況を24時間365日収集し、データベース化している「テレビ広告統計」を用いて実施しました。

ほかの業界においてどのような分析ができるのか知りたいなどご興味をお持ちいただけましたら、お気軽に以下よりお問い合わせください。

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【本記事で紹介したサービス】
サービス名:ビデオリサーチ「テレビ広告統計
集計対象期間:2013年、2019年~2023年
対象地区:関東

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