Inter BEE 2024 幕張メッセ:11月13日(水)~15日(金)

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Special 2024.07.22 UP

【Inter BEE CURATION】生成AIとどう付き合うか アメリカ大統領選で募る懸念

津山恵子 GALAC

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AP通信の生成AI利用方針

2022年に始まったChatGPTをはじめとする生成AIへの熱狂は、米国では止まるところを知らない。西海岸のシリコンバレーを中心に目まぐるしい動きが続いている。米マイクロソフトや米アップルなど大手プラットフォーマーにとどまらず、スタートアップの多くがAI関連のビジネスに取り組む。この大きなうねりのなか、米メディア業界は、AIにどう対峙し、使いこなしていこうとしているのか。

 米オープンAIが22年末、ChatGPTを公開した直後は、メディア業界を含め「AIに仕事を奪われる可能性がある」という脅威論があったのは否定できない。しかし現在は、AIはテクノロジーの進展の一つであり、それを使いこなしていく術を編み出し、「挑戦」していこうという姿勢が強く表れている。

 米AP通信をはじめ、自社でのAIへの取り組みを公式ブログなどで公開し、どうやって使っているのかをユーザー(読者・視聴者)に知らせる透明性を確保している。

 AP通信は23年8月、「AIが記者の代わりになるとは決して考えていない」という基本方針を表明。そのうえで、取材の過程などでどう使っていくのか「慎重に実験する」と発表した。AIによって生成された画像などをニュースで扱う際には、使用したことを明記し、機密情報を生成AIに入力しないなどの方針を明らかにした。

 この基本方針はアップデートを続けており、直近の今年5月には、3つの作業で生成AIを使うことを表明した。1つめは、英語の完成記事をスペイン語に翻訳すること、2つめは完成記事の要約、最後に見出しの作成時に参考にするというものだ。いずれも、最終的にはAPのジャーナリストと編集者が確認したうえで、配信する。いずれも、APが目指す「正確さ」「公正さ」「スピード」にAIモデルは貢献できるという判断を示している。

 一方でAP通信は23年10月、加盟社などローカルメディアに対し、「ローカルニュースに対する5つのソリューション」というAIを使った技術公開をした。①公共安全に関する事件情報をコンテンツ・マネージメント・システム(CMS)に入力する、②(放送局などの)動画映像からトランスクリプト(文字起こし)、要約、骨子を作成する、③市民からの情報提供を担当記者に振り分けるなどが盛り込まれた。いずれもニュース作成の過程における記者や編集者の負担を軽減するのが目的である。

ディープフェイクと大統領選挙

 デジタルメディアであるニュースサイト「Axios(アクシオス)」も、生成AIの使用についての透明性を確保する姿勢を維持している。23年に画像作成関連の生成AIが注目された際は、社内で検討した結果、「イラストには使わない」という方針を明らかにした。同社は、伝統的メディアが使う写真ではなく、記事からのメッセージに沿った写真とグラフィックスを合わせたイラストを使うことが多い。生成AIで自動作成した場合、メッセージを正しく伝えることはできないとして、使用を当面見合わせた。

 一方で、「トランプ被告・前大統領が政策について話す際に通常使うフレーズ」という記事では、データベースの作成にAIを使ったことを明記している。23年1月から24年4月にかけて記者会見や選挙集会でのスピーチをデータベースとするのにChatGPTを使い、よく使うフレーズを抽出した。そのうえで、Axiosのジャーナリストが確認、編集した。最も多かったフレーズは、「ワクチンとマスクを義務付けた学校への予算を引き上げよう」というものだった。

 今年11月に投開票日を控える大統領選挙は、生成AIが初めて使われる選挙戦が展開される。4年前までとは異なり、誰もが生成AIを使って、映像のフェイク情報であるディープフェイクを簡単に作ることができる。注目を呼んだ例として、歌手テイラー・スウィフトがレッドカーペットで「トランプが勝った 民主党が(有権者を)騙したから」という垂れ幕を掲げるフェイクビデオがSNSで拡散された。スウィフトは若い有権者に多大な影響力があり、それを利用したものだ。11月にかけての本選挙では、前職トランプ、現職バイデンの一騎打ちが確実だが、今後は二人のビデオを利用したディープフェイクが出回ることが大きな懸念となっている。

 メディア各社は、SNSでバイラルとなった画像・映像の取り扱いにはかなり慎重になっている。同時にSNS大手であるフェイスブックやXなどプラットフォーマー内での抑止策も必要だが、今のところ、その動きには乏しいのが現状だ。

【ジャーナリストプロフィール】
つやま・けいこ ニューヨーク在住のジャーナリスト。『AERA』『週刊ダイヤモンド』『週刊エコノミスト』に執筆。近著には『現代アメリカ政治とメディア』(東洋経済新報社、共著)がある。

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「GALAC」2024年8月号

【表紙/旬の顔】玉置玲央
【THE PERSON】山本 均

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ギャラクシー賞贈賞式リポート

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BOOK REVIEW『グローバルな物語の時代と歴史表象- 『PACHINKO パチンコ』が紡ぐ植民地主義の記憶-』『「笑っていいとも!」とその時代』『はじまりのテレビー戦後マスメディアの創造と知-』『インティマシー・コーディネーター 正義の味方じゃないけれど』
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