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Special 2024.07.12 UP

【生成AI最前線】クリエイターの作業をAIで効率化する一方、安心して使うためのAI倫理ガイドラインを制定したソニー

境 治 Inter BEE 編集部

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小貝肇氏(左)、森崎裕之氏(右)

皆さんご存知の通り、ソニーはもはや「メーカー」では括れないスケールの大きな企業に進化した。クリエイティブエンタテインメントカンパニーを標榜し、放送業界や映像制作分野にも機器を提供するだけでなく、様々なテクノロジーとサービスを提供している。その中ではもちろん、AIを駆使したサービスも生まれている一方で、AIを使う際の倫理規定も打ち出している。その意味でも進んだソニーのAIテクノロジーを、B2Bプロダクツ&ソリューション本部B2Bビジネス部統括部長の小貝肇氏と、同本部ITソリューション技術部ソフトウェア開発2課統括課長の森崎裕之氏に取材した。
(メディアコンサルタント 境治)

クリエイターズクラウドで様々なサービスを提供

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ソニーの放送や映像制作へのソリューションには大きく2つのソリューションがある。ネットワークドライブとクリエイターズクラウドだ。
小貝氏はネットワークドライブについて「放送局の中を全てIPで接続した柔軟な制作環境の実現を軸に、系列局とも距離の制約なしにコンテンツ制作できる環境を、さらにネットワークを広げて提供しよう考えています。」と説明する。
一方、クラウド上でコンテンツ制作に対する様々なサービスを提供するのがクリエイターズクラウド。大きく6種類のサービスが並んでいる。
「たとえばM2 Liveはクラウドスイッチャーと呼ばれ、スポーツ中継などで現場から離れた場所で映像をライブでスイッチングできます。Ci Media Cloudは別々の場所にいる人同士で共同作業が可能になります。」


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ユーザーは、自分たちのニーズに応じてこれらクリエイターズクラウドのメニューから選んで使うことができる。すでに放送局・プロダクションなどから映像制作、コンテンツ流通の分野などで利用されている。

AIを駆使してコンテンツ制作の制約を取り除くA2 Production

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そしてクリエイターズクラウドのサービスの中で、AIを使ったコンテンツ制作の自動化、省力化を提供しはじめているのがA2 Productionで、生成AIの活用も検討している。これについては、森崎氏が事例を実際に見せながら説明してくれた。
「この5月に新しくリリースしたちょっと面白いものが、リップシンクアシストです。ドラマの英語の音声を日本語に吹き替える時にどうしても位置がずれがちですよね。エディターの方が一生懸命音を聞いてリップを見ながらやっていたのをAIで自動化します。これによってクリエイターさんの負荷を下げるのが狙いです。」
英語の音声を解析して、そこに日本語吹き替えを持ってくる。

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まずは目新しいところを紹介してもらったが、そもそもA2 Productionはソニーが用意しているAIサービス系ソリューションのプラットフォームだ。これまでは各放送局用に個別にシステムを作り込んでいたが、SaaS型のクラウドでソリューションを提供しており、機能を次々に追加している。AIでどんどんアップデートされ、常に最新のソリューションを利用できるのだ。
「これを使ったTBSさんの事例が、『どうぶつ奇想天外』の再利用です。ミックスされた映像の音声を分離し、使えない部分を差し替えています。人がやって手間もお金もかかる作業を自動化しています。」
新たに配信できる形になった『どうぶつ奇想天外』がU-NEXTチャンネルで公開されている。

AI活用の倫理を明文化したAI憲章を元に開発する姿勢

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AI倫理ガイドラインページをキャプチャー https://www.sony.com/ja/SonyInfo/sony_ai/responsible_ai.html

ただ、ソニーの生成AI活用はある意味慎重だ。クリエイターを大事にするソニーだからこそ、AI利用でクリエイターの権利を損なってはならない。そのために守るべき倫理を長年議論してきている。
そうした検討の結果を、すでに2018年、「AI倫理ガイドライン」としてまとめ、公開している。小貝氏は、こう解説してくれた。
「ワールドワイドでもかなり早いタイミングで出しています。安心して使えるサービスの提供をする上でも、プライバシーや公平性、透明性がガイドライン化されています。それらをしっかり踏まえて生成AIを活用し、コンテンツ制作がリッチになったり効率化できる環境を提供したいと考えています。」

AI倫理にも関係しているのが、カメラの画像がフェイクではないことを示す真正性ソリューションをファームウェアのアップデートで提供したり、クリエイターズクラウドのファイル共有サービスではフォレンジックウォーターマーク、見えない電子透かしに対応したりもしている。
生成AIが毎日進化を重ねる中で、クリエイターの権利をどう守れるか、フェイクではないことを示せるかも併せて考えていくべき課題だ。ソニーは、進化を急ぐよりこれらの課題を重視する姿勢がはっきり持っていることがわかった。
私たちも生成AIにできることを楽しみながらも、そこにある課題も認識しておきたいものだ。

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